21年度からAOは「総合型選抜」に、推薦は「学校推薦型選抜」に変わり、総合型は学力評価が必須となる。一部の大学が書類や面接のみの審査で学力の担保が不十分との批判があったからだ。どちらも冬に行われる一般入試より出願や合格発表が夏から秋と早かったが、それを今より1カ月程度後ろ倒しにする。受験後から大学入学までの空白期間を縮める狙いがある。

 こうした改革のなか、20年度の募集人員が589人と旧帝大でも突出する東北大では、5年間でAO比率が18%から25%へとアップ。「3割目標」を掲げた当時の国立大学協会の会長が、同大総長だったことも改革を後押しした。

 同大高等教育開発部門入試開発室の倉元直樹教授は言う。

「当初は教員間で『AOは手間がかかる』との印象が強く拡大は厳しいという認識でした。ですが、『学力重視のAO』を旗印に実施していくなかで、手応えや『この学生を育てたい』というモチベーションが生まれました」

 主体的な学びに積極的な学生と出会うべく、全国21カ所で高校教員向けの入試説明会を実施。教員と顔なじみになることで、学校全体で東北大受験を支援するムードも生まれるという。21年度には、AO比率を31.6%と見込むなど、「3割」の目標達成に王手をかける。

 大学側の変革に対応し、志望校への切符を手に入れる秘訣はどこにあるのか。4年連続で東大推薦入試の合格実績がある茨城県の私立江戸川学園取手高校は毎年、東大以外にも多くの推薦合格者を出す。生徒の共通点はやはり「とがった個性」だ。

「世界平和のために世界共通の歴史教科書を作りたい」

 このテーマを軸に東大の推薦入試に挑んだ男子生徒は見事合格。推薦受験を決めたのは、歴史好きで岩波新書を何百冊と愛読する男子生徒のマニアックな姿にピンときた教員が勧めたことがきっかけだった。同校進路指導部長の代淳教諭(41)は言う。「受験を決めてからは、学校を挙げて全力でサポートしました。発想も驚きでしたが、考え方に筋の通った生徒でした。ただ、数学が少し苦手で一般入試だと『絶対に受かる』というタイプではない。まさに推薦でなければ手に入らないとがった子だったと思います」

 生徒の個性に“トガリ”を出すには、教員のサポートも不可欠だ。だが、ガチガチに固めた受験指導ではないという。熊代教諭は言う。

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