もちろん、予備選挙は6月までと長く、誰が生き残るのかは現時点では不透明だ。ブダジェッジ、サンダースの両陣営は、草の根選挙に長けている。しかし、アイオワ州は人口が少なく、白人が9割以上という人種構成だ。今後アフリカ系アメリカ人やヒスパニックが多い州の予備選挙も続く。

 コンサル会社ヴェラ社長で元ホワイトハウス上級職モー・ヴェラ氏はこう話す。

「候補者が、女性、アフリカ系、ヒスパニック、同性愛者、若者など全てのグループに強いということが明らかになれば、自ずと決まってくる」

 一方、今回の党員集会は、今後の選挙システムに暗い影を落とした。

 党員集会直前の2月1日、地元紙デモイン・レジスターとCNNは、1944年から続いていた世論調査結果の発表をキャンセルした。ロボットコールではなく、調査員が直接有権者に話を聞く同調査で、調査員がブダジェッジ氏の名前を有権者に聞くのを忘れていたことが発覚したためだ。

 また、アイオワ州民主党の集計システムにバグがあり、当日夜中までに判明する結果が大幅に遅れ、6日現在も100%集計されていない。今後49もの州である予備選挙と11月の本選挙がどうなるのか、不安が増す。

 実はアイオワ州で、事実上の共和党指名候補であるトランプ大統領の集会にも行った。会場が大きかったためもあるが、民主党候補で一番多かったブダジェッジ氏の2千人を大きく超えて7600人が集まった。トランプ氏は、こう切り出した。

「この前に行ったミシガン州は、繁栄している。シンゾー(安倍首相)に言った。工場をもっとつくるべきだ。彼はやるだろう」

 その後は、「民主党は左翼」「メディアはフェイクニュース」とまくしたてた。人々の絶叫で、トランプ氏の声がかき消されることもあった。規模、熱狂度、演説の長さのすべてで、民主党候補の集会をはるかに上回っていた。

 トランプ氏という仮想敵が決まっているにもかかわらず、決定的な候補者像が見えない民主党は、果たして11月に勝てるのだろうか。(ジャーナリスト・津山恵子=アイオワ州デモイン)

AERA 2020年2月17日号より抜粋