現職であると同時に、トランプ支持者が望む通商政策、気候変動問題をなきものにする主張が人気だ(撮影/津山恵子)
現職であると同時に、トランプ支持者が望む通商政策、気候変動問題をなきものにする主張が人気だ(撮影/津山恵子)

 2月3日、アイオワ州で米大統領選挙の火ぶたが切られた。ジョー・バイデン氏、バーニー・サンダース氏が有力視されるなか、トップに躍り出たのは彼らより40歳近く若い、ピート・ブダジェッジ氏だった。ジャーナリスト・津山恵子が、現地で民主党候補の集会を取材したAERA 2020年2月17日号を紹介する。

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 とうもろこし畑の上に雪が積もった荒野が果てしなく広がるアイオワ州の人口は、わずか315万人。ニューヨーク市の半分よりはるかに少ないこの地に、4年に1度、大統領候補者指名争いをする候補者と、内外メディア数千人が殺到する。全米で最初に開かれる党員集会だけに、「選挙の行方に大きな影響を与える」とされているためだ。

 私が取材した2008年の党員集会でも、バラク・オバマ前大統領が、最有力とされたヒラリー・クリントン上院議員(当時)を破って急浮上し、本選挙での勝利を決めた。

 2月3日の党員集会で勝利するために、各候補者は何カ月も前からアイオワ州詣でを始める。直前には全員が同州に入り、1日に数回の選挙集会を開く。そこで、ピート・ブダジェッジ・インディアナ州サウスベンド前市長(38)、バーニー・サンダース上院議員(78)、エリザベス・ウォーレン上院議員(70)、ジョー・バイデン前副大統領(77)、実業家アンドリュー・ヤン氏(45)と、5人の民主党候補の集会をはしごした。

「ハロー、アイオワ!」

 ステージに駆け上がったブダジェッジ氏が言うと、キャーッと歓声が上がった。高校の体育館を埋め尽くす2千人の支援者らは、笑顔に満ち、「ブ・ダ・ジェッジ、ブ・ダ・ジェッジ」と掛け声を始める。それをニコニコと受け止めるメイヤー・ピート。

「新たなアプローチをして、ドアを開けば、選挙に勝てることは歴史が証明済みだ。大切なのは、米国人を分断するのではなく、奮い立たせることだ。トランプを負かすという目的のためだけではなく、私たち自身のために!」

 と、「結束」を訴えた。同性愛者のパートナー、チャスティン・ブダジェッジ氏(30)もこれに先立ちアイオワ州内を回り、幅広い支援者にアピールした。

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