「ここも共感を呼びます。スピーチは自己紹介と同じ。自分らしさが大事です」
日本人は特に英語で話すとなると、ユーモアや気の利いた表現を入れなければと思いがちだ。
「冒頭からそれでスベると挽回は厳しいので、お勧めしません。coolなどの流行語もご法度。クックのスピーチも若者に媚びる表現は一切ありません。自分が知っている言葉を使いましょう」
国連気候行動サミットで訴えた環境活動家のグレタ・トゥーンベリ(16)のスピーチも、彼女だから口にできる表現の連続だ。
「how dare youは捨てぜりふなので、口にしないほうがいい。ただ、人の目を覚まさせる強い表現を使いつつ、科学的なデータを挙げているので、納得できます。ただの感情論で終わっていません」
アメリカの女子サッカー代表、メーガン・ラピノー(34)は、FIFAの授賞式の場で、差別される側の例をあげ共に怒りの声をあげようと訴えた。自身も同性愛者であるラピノーが話す強く短いフレーズは人に行動を促す。
「こうしたフレーズの繰り返しは印象的な響きになるので効果的です」
3人のスピーチの共通点は、自分らしくありながら、「独りよがり」でないことだ。
「英語ではdeliver a speechで相手に届けるもの。聞く人の立場で内容を考えてみましょう」
(ライター・稲田砂知子)
※AERA 2019年12月2日号