将来性ある企業に出資をするように、未来ある人材にも投資したい。いまや新卒でも「年収1千万円」は、夢どころかリアルだ。
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少なくとも600万円以上、最高で1千万円を提示する。中途採用ではなく新卒に、だ。
「AI(人工知能)のような技術は大学で最先端を学んだ学生が即戦力となる分野で、採用ターゲットです。事業価値を考えても適当だと判断しています」
ディー・エヌ・エー(DeNA)のAI部門を統括する山田憲晋AIシステム部長が、そう説明する。同社では2017年、高いAI知識を持った学生のための採用枠「エンジニア職AIスペシャリストコース」を設けた。同社の新卒エンジニアは年俸500万円がベースだが、このコースは「600万円以上、最高1千万円」だ。
19年4月にも、この採用枠で約10人が入社。必ずしも年齢と技術が比例しない職種とはいえ、実際に1千万円の年収を提示する学生に求めるものとは何か。
「研究者としてトップレベルなのが前提です。学生時代に、国際会議に論文を通しているのはほぼ最低条件。あとは、事業やサービスづくりに情熱を持ってプロジェクトを引っ張れるような人ですね」(山田部長)
大西克典さん(27)はAIスペシャリストコースで採用され、17年10月に新卒入社した。東京大学大学院でコンピュータービジョンを専修。修士時代には著名国際会議で複数の主著論文を発表した。就活ではAI専門職の採用枠を設ける企業をターゲットにした。
「専門職として評価してくれる企業が条件でした。DeNAに決めたのは自分がやりたかった、スポーツにAIを生かす仕事ができるからですが、正当に評価してくれていると思います」
入社前から大の横浜DeNAベイスターズファン。今は動画解析やデータサイエンスでチームを強化するプロダクトづくりに励む。夢はベイスターズ優勝に少しでも貢献することだ。
DeNAでは今後も、同規模でAI人材の採用を進める予定だ。需要が拡大するAI人材だが、山田部長はあくまで能力に見合った金額を提示すると強調する。マネーゲームには乗らず、DeNAの魅力を丁寧に伝えながら採用活動を続けるという。
近年、新卒であっても技能や資質に応じて高い年収を提示する企業が増えている。特に顕著なのがIT業界だ。エンジニアに特化した新卒向け就活エージェント「レバテックルーキー」の泉澤(せんざわ)匡寛さんは、こう話す。