「普天間返還にあと何年かかるかを政府は甘く見ている。あるいは、国民に甘く見せようとしている。しっかりと現実を見据え、辺野古新基地建設によらない普天間返還の方途を探る、今はその機会と捉えるべきです」

 もう一つ、知事の念頭にあるのは沖縄の米海兵隊の再編成に伴う運用見直しによる普天間飛行場の閉鎖・返還だ。沖縄の米海兵隊は2012年の日米合意で、実戦部隊の大半をグアムやハワイ、オーストラリアなどに移す再編計画が決まった。こうした方針を踏まえれば、海兵隊の運用見直しで返還を実現できるとの思いがある。

 一方で、「覚悟」もうかがえる。仮に政府がSACWO設置に応じたとしても、その場で県民が納得できる「現実的な」着地点を探るには、針に糸を通すような難しい判断を迫られる。玉城県政にとっても大きなリスクを伴うが、政治的な「決断」も辞さないと言う。

「具体的に話を進めるためには覚悟をもって臨み、真剣勝負しないといけない。今までは要望だけ伝えて日米両政府の協議に任せ、下りてくるものをのむかのまないかでしたが、それではダメ。もう一歩、現実的に踏み込む必要があると思っています」

 在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄。歴代知事は基地問題への対応に心身を削った。

「使用期限を15年とする」などの条件付きで「辺野古容認」を掲げて知事に当選後、政府に条件を反故にされた稲嶺恵一元知事は在任中、毎晩、泡盛を酔いつぶれるまで飲んだことを明かし、「基地問題が頭から離れない。飲んで、忘れるためじゃない。眠れないんだ」(13年12月22日「沖縄タイムス」)と退任後に吐露した。

 故翁長雄志前知事は命が尽きる直前まで政府や「本土」の無理解と闘い続けた。その後継として、県民の期待を背負いながら国と対峙するのは相当な重圧だろう。「怖さ」はないのか。

「政府に対しては怖いというより、丁寧に対処したいという思いが強いです。今はしっかり考えて言葉を選んだり、タイミングを判断したり、できるだけ刺激し合わないような関係を保つことに腐心しています」

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