【早稲田大学】情報生産システム研究科(北九州市)。「新思考入学試験」は地方で活躍する人材を育成するという、早稲田大学の創立以来の理念に基づいているという(写真:早稲田大学提供)
【早稲田大学】情報生産システム研究科(北九州市)。「新思考入学試験」は地方で活躍する人材を育成するという、早稲田大学の創立以来の理念に基づいているという(写真:早稲田大学提供)
【立教大学】「立教では教員に対してFDセミナー(研修)を開催し、常に新しい理論を学び、教え方を研究しています」(鳥飼教授)(写真:立教大学提供)
【立教大学】「立教では教員に対してFDセミナー(研修)を開催し、常に新しい理論を学び、教え方を研究しています」(鳥飼教授)(写真:立教大学提供)

 18歳人口が2018年から減少に転じた。多くの私立大学は学生の確保のため、次の一手を打ち始めている。その効果は偏差値には表れないが、子どもを大学に進学させたいと思うなら、知っておくことばかりだ。

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 JR筑豊線折尾駅で下車しバスで15分。かつて鉄鋼で栄えた北九州市は、産業構造の変化の中、この地に「北九州学術研究都市」をオープンした。約335ヘクタールという広大な土地に大学や研究機関、半導体設計関連企業などが進出している。その一つが早稲田大学大学院情報生産システム研究科(IPS、北九州キャンパス)だ。

 今年度から始まった基幹理工学部・研究科(西早稲田キャンパス)とIPSの「新思考入学試験(北九州地域連携型推薦入試)」では、北九州地域の指定校の生徒を推薦で受け入れ、東京の西早稲田キャンパスで基礎教育を実施。4年次の研究室配属時から北九州キャンパスで卒業論文以降の専門研究を行う。

 同大理工学術院統合事務・技術センター事務部調査役の大久保幸三さん(50)はこう語る。

「IPSを拠点として、学生を育てて戻し、人材を還流するということを構想しました」

 学部1年の段階からの長いスパンで学生の教育を考えることはとても重要だと基幹理工学部・研究科教務主任の柳尾朋洋・理工学術院教授(43)は語る。

「この制度の背景には、独立研究科であるIPSの先生方の学部生教育への強い熱意もありました。学生の皆さんにとってもIPSという留学生が多く国際的でユニークな環境で研究するのは、貴重な機会になると思います」

 今年この入試で入学した北九州市出身の女子学生(19)はこう語る。

「もともとは県内か九州内の国公立大学進学を考えていました。生まれてからずっと過ごした大好きな街なので、3年間東京で過ごして北九州に戻ってこられるのは嬉しい。大学の寮にも入れたので、勉強に集中できる環境で毎日頑張っています」

 この入試の入学者で申請資格に当てはまる学生には「めざせ! 都の西北奨学金」の支給が確約され、また就職時には地元企業の協力による就職支援が行われるという。

 同センター事務部総務課の内田善太さん(43)は、「教育と研究のクオリティーを保ちながら、いかに多様性を広げるか。早稲田の長いレガシーを生かしつつ、守りに入らず新しい取り組みを続けたい」と語る。

 北九州市産業経済局新産業振興課の山口直孝・研究開発拠点化担当係長(40)は、若者の地元定着は最も重要な課題であると言う。

「今回の取り組みは地方創生にとって大変重要です。学生さんに地元の企業との接点を早い段階で持っていただき、地元企業への就職につなげていきたい」

 東京と地方にキャンパスがあり、地方に定着している魅力的な企業があることが今回の取り組みにつながった。

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