「地元企業にとっても優秀な人材が確保できる。市にとってもありがたい話。大学にとっても地方創生への貢献になります」(山口係長)

 一方で、立教大学は英語の強みを生かす。

「5年後は学生の50%がTOEIC730点以上、100%が600点以上」

 都内の中堅私大の英語教員は、同大が2014年に発表した国際化戦略「Rikkyo Global24」の中の、スコア達成を前面に出した取り組みに「攻めてるな」と感じた。

「英語の立教」といわれる同大の英語教育への取り組みは古い。教養教育の改革として1997年から「全学共通カリキュラム(全カリ)」を実施したが、その中で英語教育学に基づいた教育を開始した。それまで担当教員ごとにバラバラだった授業に、統一カリキュラムを導入。統一シラバス、統一評価基準を策定し、統一教科書も教員自ら編纂。当時としては先駆的な試みで、他大学からの見学が相次いだ。全学共通カリキュラム運営センター英語教育研究室前主任の鳥飼慎一郎・異文化コミュニケーション学部教授(64)はこう語る。

「英語が得意な学生と苦手な学生が混在していると効率のいい教育ができないので、プレイスメントテストをやり能力別にクラス分けをしました。学生も、自分のレベルにあった英語教育をしてくれるという安心感と信頼感があります」

 1年次は8人程度の能力別の少人数クラスの「英語ディスカッション」が全学部で必修となる。授業は全て英語で、10年度から導入された。16年に現代心理学部を卒業し、現在は会社員の女性(24)は、英語は苦手で入学直後に受けたプレイスメントテストでは下から2番目のクラスだった。それでも帰国子女と一緒のクラス等で、難解な授業を受けるよりいいと思った。

「少人数で連帯感もあり、英語のクラスは他のクラスより仲がいい。先生は担任みたいに見てくれていました。苦手なりにサバイバルスキルが身についた」

 目指すべき教育を実現させるには人材、そして教員の質の確保も必要だ。

「プレイスメントテストとともに週2回同じ先生が同じ科目を教えるペアクラスを始めました。しかし非常勤講師の先生に週2回出講してもらうのは、日程上の都合がつかない場合が多い。そこで教育講師という制度を設け、待遇を上げて良い先生を集めました」(鳥飼教授)

(編集部・小柳暁子)

※AERA 2018年11月5日号より抜粋