災害が起きると、第一に命を守り、次に食料やライフラインを確保することが必須だが、その後、第三の問題としてお金や資産などの課題が被災者を襲う。

「まずは当座の現金です。電子決済のシステムが発達して現金をあまり持ち歩かない人が増えていますが、東日本大震災や先日の胆振東部地震などでは広範囲で停電し、クレジットカードなどが使えなくなりました。一定の現金は必要です」(岡部さん)

 発災直後は、店舗が営業していてもおつりが準備できず、高額紙幣を受け取ってもらえないことも多い。岡部さんは続ける。

「多量の紙幣や硬貨を常に持ち歩くのは難しいでしょう。それでも無理のない範囲で、千円札10~20枚、500円玉、100円玉数枚程度はいつもに財布に入れておきましょう」

 避難所などへ行かずに自宅で被災生活を送る在宅避難などに備えて、当座の生活費10万~20万円程度を、できれば千円札で保管場所を分散させて用意しておくことも有効だ。

「ただし、過去の大震災後も、ATMを積んだ移動車が巡回するなどして、比較的早期に現金の引き出しができました。セキュリティーの面からも、多額の現金を手元に置いておくことは勧めません」(岡部さん)

(編集部・川口穣)

AERA 2018年10月1日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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