水の冷たさに震えながら耐えていると、すんでのところで水位の上昇が止まり、ゆっくりと水が引き始めた。7日の午前4時ごろには何とか歩けるほどになったという。そこで、女性は夫の手を取り、散乱した家具で体中傷だらけになりながらも2階へ避難した。

 命は助かったものの1階は水に浸かり、現金や預金通帳などを入れた金庫も流された。より低い位置にあった農機具などの倉庫は完全に浸水したという。

 娘夫婦が当座のサポートをしてくれたが、先は見通せない。

「今はまだ片づけに一生懸命でわからないけれど、家もお金も今後どうなるか。不安です」

 実は、女性の家は県道から少し坂を上った先の山際にあり、明治期の大水害でも被害を受けなかった場所。山に近い立地から土砂崩れには常に警戒していたものの、水害を受けるのはまったくの想定外だった。

「まさか、あそこまで水が来るとは……」

 西日本各地を襲った平成30年7月豪雨、直近の北海道胆振(いぶり)東部地震、台風21号や大阪北部地震など、今夏はいくつもの自然災害が発生した。

 日本は「自然災害大国」であると言われるが、データでもそれは裏付けられる。日本の陸地面積は、地球の全陸地のわずか0.25%。しかし、米国地質調査所のデータによると、2000年以降に世界で発生したマグニチュード7以上の巨大地震287回(9月10日現在)のうち、1割近い26回が日本で発生している。また、世界の活火山の7%が日本にある。

 国連大学が16年に発表した「世界リスク報告書」では、日本は「自然災害で国民が被害を受けるリスク」が171カ国中17位とされた。上位に位置する国のほとんどは社会インフラが未整備な途上国で、米国(127位)やフランス(152位)など、欧米の先進国と比べると日本の災害リスクは際立っている。

防災士・ファイナンシャルプランナーの資格を持つ防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは言う。

「竜巻やゲリラ豪雨など、これまであまりなかった災害で被害を受けるケースも増えています。災害の質が変化していて、いつ、誰がどんな災害で被害を受けてもおかしくありません」

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