愛媛県内子町にある古民家を改修した宿「織・久」(写真:Project A.Y.)
愛媛県内子町にある古民家を改修した宿「織・久」(写真:Project A.Y.)
宿泊型客船「guntu」は昨年10月に就航したばかりだ(写真:Tetsuya Ito  Courtesy of Setouchi Cruise)
宿泊型客船「guntu」は昨年10月に就航したばかりだ(写真:Tetsuya Ito Courtesy of Setouchi Cruise)
【「何しに?」50自治体アンケート】観光庁宿泊旅行統計調査、2017年10月分/参考第8表の施設所在地(主な市区町村)、従業員数(3区分)別外国人延べ宿泊者数から、3大都市圏(市)を除いて多い順に並べたもの。各自治体にアンケートや取材を行った。-は回答が得られなかった(AERA 2018年2月19日号より)
【「何しに?」50自治体アンケート】観光庁宿泊旅行統計調査、2017年10月分/参考第8表の施設所在地(主な市区町村)、従業員数(3区分)別外国人延べ宿泊者数から、3大都市圏(市)を除いて多い順に並べたもの。各自治体にアンケートや取材を行った。-は回答が得られなかった(AERA 2018年2月19日号より)
【「何しに?」50自治体アンケート】観光庁宿泊旅行統計調査、2017年10月分/参考第8表の施設所在地(主な市区町村)、従業員数(3区分)別外国人延べ宿泊者数から、3大都市圏(市)を除いて多い順に並べたもの。各自治体にアンケートや取材を行った。-は回答が得られなかった(AERA 2018年2月19日号より)
【「何しに?」50自治体アンケート】観光庁宿泊旅行統計調査、2017年10月分/参考第8表の施設所在地(主な市区町村)、従業員数(3区分)別外国人延べ宿泊者数から、3大都市圏(市)を除いて多い順に並べたもの。各自治体にアンケートや取材を行った。-は回答が得られなかった(AERA 2018年2月19日号より)

 2017年の訪日外国人旅行者は2869万人と過去最多に。規制緩和などで積極的にインバウンド対策を後押ししている安倍政権だが、地方のリアルな現状はどうなっているのか。エリアでブランド化を進め成功している、瀬戸内エリアの状況をレポートする。

【50自治体に聞いた!「外国人観光客は何しに日本へ?」結果はこちら】

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 関西空港や福岡空港からもアクセスのよい瀬戸内エリアの中でも広島県は外国人観光客に知名度が高い。トリップアドバイザーの外国人に人気の観光スポットランキング(17年)によれば、平和記念資料館と嚴島神社が3位と4位に入る。広島県観光課長の山本栄典さん(48)は、

「瀬戸内エリアの宿泊者数は、北海道や沖縄までは届いておらず、エリアでブランド化をしていく必要があります」

 と言う。単独で売り込むより、周辺の観光地が協力し合うことでその魅力も伝わりやすい。この瀬戸内エリアの観光振興は「せとうちDMO」という広域DMOが担う。広島県をはじめ、兵庫県、岡山県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県の7県をとりまとめて合同でプロモーションや受け入れ整備などを行う。DMOとは、もともとは欧米の概念。従来の観光協会などと違うのは、プロの人材によってマーケティングの結果を出すことにある。現在は、全国に150を超す組織が活動を展開する。2016年4月にスタートしたせとうちDMOが珍しいのは、地方銀行などの瀬戸内地域を中心とした金融機関が参加し事業者を支援している点だ。事業者は活動するにあたって出資を募ることができる。この形を提案したという前出の近畿大学の高橋教授はこう言う。

「せとうちDMOのようにファンド機能を持てば、新たなサービスや商品を生む資金支援も可能でしょう。持続可能というのは補助金をつぎ込むことじゃありませんから。客数が増えるだけじゃなくて消費額が増える取り組みをすることで地域が活性化します」

 このファンドの機能を使って、せとうちエリアでは続々とサービスが生まれている。せとうちホールディングスが運用する「guntu(ガンツウ)」という宿泊型客船の就航もそのひとつだ。旅慣れた人をターゲットにしていて2泊3日(2名1室利用)でひとり40万円~。ゆっくりと瀬戸内海を周遊する。まだ日本人の観光客が多いが、米メディアの取材があってから徐々に外国人も増えている。

 そのほかにも、昨年秋に開業した愛媛県内子町にある古民家を使ったゲストハウスにも注目が集まる。空き家を改修し、一棟貸しにした。運営するのは、内子町に住むNPO法人「Project A. Y.」の代表、大西啓介さん(45)である。この街の商店会長でもある。

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