金融庁の危機意識も強烈だ。異例の就任3年目に突入した森信親長官。続投が決まった直後の昨年7月中旬、全国の地銀頭取たちを前に言い放った。

「頭取の方々の間でも、このままではまずいとの認識は共有されているようだが、それに対する解決策は確立されていないように見受けられる。対策の中には、引き続き人口の多い地域に出て行き、低金利攻勢により量的拡大を図るというものも存在しているが、他の銀行よりコスト競争力が著しく高い銀行は別として、金融機関の本質的な価値や競争力の向上に結びつくとは思えないことをなぜ続けようとするのか、正直疑問に思っている」

 懸念はすでに現実となった。貸し出しや手数料といった顧客向けサービスで利益率、利益率増減幅ともマイナスに転落している地域銀行が数多く存在する。「地銀の本業である貸し出しは、残高が増えたにもかかわらず利息収入は減少の一途をたどっている」(金融庁関係者)というのが実情だ。

 そうした苦境を象徴しているのが、「カーテンコール貸し出し」と呼ばれる融資の急増だ。事業の継続を断念した企業に対し、廃業・解散のための資金を融資するもので、劇の最後に出演者が観客に挨拶して幕が閉じられるカーテンコールになぞらえてネーミングされた。人口減少に伴って中小企業を中心に苦しい業況は続いている。表面上の倒産件数こそ減っているものの、休廃業・解散の増加は、いわば「隠れ倒産」の増加を示す。(経済ジャーナリスト・森岡英樹)

AERA 2018年1月22日号より抜粋