「ビッグデータが恣意的な解釈に使われうることです」

 そう話すのは、生活保護問題対策全国会議・事務局長の小久保哲郎弁護士だ。今年7月、大阪市は大阪市立大学と共同で行った、生活保護を対象とした国内初のビッグデータ分析の結果を発表した。

 この結果で注目されたのは、住民登録日から生活保護受給日までの期間が6カ月未満の人が男性では19.8%、女性では10.6%だったことだ。これを受けて吉村洋文大阪市長は「大阪市に入ってすぐの生保申請については、原因をさらに分析調査し、受給審査の専門チームを立ち上げる」「大阪市に転入してすぐ保護申請するケースが突出して多い。なんでだ?」とツイートし、市長会見でも同様の発言をした。

 しかし、住民票は地元に残したまま仕事を求めて大阪市に来たが見つからず、やむを得ず申請する人が多いことや、そもそも初めての分析のため他都市との比較はできないはずだ。

「生活保護の水際作戦を強化するような政策を打ち出すなど、生活保護費削減という目的ありきでビッグデータを曲解しているように思えます。調査を担当した人もこのようなデータの使われ方に憤る人もいました」(小久保さん)

 今のところこのデータに基づく生活保護行政の変化はないが、小久保さんたちは今後も注視していくという。私たちの暮らしを便利にするビッグデータ。問われているのは、それを扱う企業や行政、そしてデータの提供者である私たち一人一人のリテラシーだ。(編集部・竹下郁子)

AERA 2017年12月11日号より抜粋