しかし、教員養成系大同士では補完性がない。教員養成は戦前から都道府県単位で行われ、現職教員の研修など教育行政とも結びついてきた。

「地域との密接な関係を壊してまで統合するメリットはない」(羽田さん)

 文科省も「必ずしも統合で数を減らすこと自体がゴールではない」(柳澤好治・高等教育局大学振興課教員養成企画室長)という立場。いま、大学が模索するのも「連携」だ。

 例えば鳴門教育大学は2年前から、同じ四国の香川大学、高知大学、愛媛大学と教職大学院での連携を進めている。教職大学院は、座学中心の学部では身につきにくい実践力を養う場として、文科省が今後の教員養成の核と位置づけているものだ。

 鳴門教育大の佐古秀一理事は、

「4大学の間でかつて検討された統合ではなく、授業の共同化など、連携体制を整えています」

 北海道教育と愛知教育、東京学芸、大阪教育の各大学も、「へき地教育」「外国人生徒支援」などそれぞれの得意分野でプログラムを開発し、共有を進める。

 高等教育を専門とする筑波大学特命教授の金子元久さんは、一つの大学が小中高すべての教員養成を担うのではなく、近隣の大学で分担する形も進むとみる。他にも、「国立大教育学部の学生が、毎週月曜日と夏休みの集中講義は、近くの私立大で受ける」といった形が広がる可能性がある。

 ただし、連携だけで生き残れる保証はない。金子さんは言う。

「個人的に完全な統合には賛成しないが、財政は厳しくなる一方だ。地元の学校への協力や教員の再教育を有料にするなど収入を増やす努力が必要だ」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年11月27日号より抜粋