舞台美術に音楽、そして演技が加わる総合芸術が演劇。動員数で日本一と評判の東京都の国立高校の「国高祭」は、その演劇において「プロ劇団顔負け」のクオリティーと高い評価を受けている。定員約320人で8クラス編成の3年生総勢で取り組む演劇だが、3年間がクラス持ち上がり制のため、一枚岩になれるのだ。

 今年は8演目のうち二つがオリジナル作品。それら以外でも、東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、石田衣良の『アキハバラ@DEEP』などを下敷きにし、自らの脚本・演出で演じた。教室という狭い空間に設けられた舞台、エントランスの装飾にもそれぞれの担当がいて、創意工夫を凝らしている。

 結果として、同校からはクリエーティブ畑で活躍するOB・OGが非常に目立つ。電通や博報堂などの大手広告会社や、NHKやキー局にも多くの人材を送り込んでいる。文化祭を山場として培われる創造性が卒業後にこそ実を結ぶ証左だろう。

 高校は単なる大学進学への布石ではない。課外活動への取り組みに生徒の自治能力も問われ、総合的な人間力をいかに涵養するか? という役割が、今後ますます評価基準ともなろう。その指標が文化祭と言えるのだ。(ジャーナリスト・鈴木隆祐)

AERA 2017年11月6日号