「これほど知的好奇心を満足させるものはありませんでした」

 古文書を分析し、天草四郎の財宝が沈められたとする池の跡を突き止めた。金属探知機も動員して掘りまくったが、財宝は一向に見つからず。だが、やみつきになった。

「宝探しは昔の人との知恵比べ。昔の人の気持ちになって、自分だったらどこに隠すか考える。そういう想像が実に楽しい(笑)」

 以来、埋蔵金ひと筋。各地の埋蔵金伝説を追求するうちに仲間ができ1978年、埋蔵金に目がない人たちが集まった「日本トレジャーハンティング・クラブ」(JTC、現在会員約90人)を組織し代表に。自身は92年に会社を辞め、作家として独立した。いまでは日本で唯一のトレジャーハンターを名乗り、埋蔵金に関する著作も数多くある。

 これまで八重野さんは全国約三十数カ所の調査を手がけ、十数カ所で実際に発掘作業をした。多くが人家から離れたところにある断崖や密林の中。史実をひもとき、地元に残る伝承などを詳細に調べ、土地の人に話を聞いて仮説を立て掘っていく。

 ひょうひょうと、粘り強く。これが“八重野流”の宝探し。

ほとんどが手作業だ。昔は重機なんてなかった。財宝を隠すにしてもそれほど深く掘って埋めるとは考えにくい。深さはせいぜい1.5メートル。コンパスや地図、シャベル、そして金属探知機があれば十分だという。

●40年探して発見はゼロ

 かれこれ40年以上お宝を探しているが、発見はまだゼロ。冒頭で紹介した信玄のお宝も数えきれないくらい探しているものの、小判一枚見つかっていない。この日も1時間近く樹海の中を歩き回ったが、出てきたのは空き缶だけ。けれど、あまり悔しそうではない。
「毎回、『今度こそ』と思っているのですが結果が出ない。しかし、しばらく経つと、新しい根拠をもとに新たな可能性が出てきて、その可能性をつぶすためにまた訪れる。絶対にないといえない限り、探す価値はあると思います。次のターゲットは、千葉県館山沖の沈没船のお宝です」

(編集部/野村昌二)

AERA 2017年9月25日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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