●息子の誕生日か後輩か

 家に帰れば妻まで、

「私は仕事を犠牲にしてこれだけやっているのにあなたは!」

 などと不満をぶつけてくる。男性だって家事や子育てにかなり手を動かしているのに。

 少し前に話題になった牛乳石鹸のウェブCMには、大いに共感した。

 家事を全くしなかった父とは180度異なる自らの「父親像」に戸惑いを感じる、「イクメン」の男性が主人公。ケーキを買って帰宅するはずの息子の誕生日、後輩が上司に叱責される様子に気づく。後輩と飲んで帰った男性を、妻は「なんで飲んで帰ってくるかな」と叱責。理由も告げず、バスルームへと消える男性──。

 牛乳石鹸には「とにかく不快」「どういう意図で作っているのか」という批判の声が多く寄せられたが、男性からは「父親の葛藤がよく出ていると思う」などと共感する声も多かった。本県の男性が共感したのも、CMの父親が居酒屋で後輩を慰めるシーンだ。

「落ち込んだ後輩を見つけなかったら、この男性は予定通り帰宅したんだと思いますよ。でも、見つけてしまった。子どもの誕生日はやり直しがきくかもしれないけど、いま目の前で落ち込んでいる後輩に手を差し伸べないわけにはいかない。それが管理職なんです。私だって、この状況なら同じように後輩を誘うと思いますよ」

●圧倒的な「知識不足」

 男性の育児参加やそのことに対する職場の理解が進まないのは「知識不足」だと指摘する人がいた。高橋俊晃さん(35)だ。ワークスアプリケーションズで9カ月の育休を取得し、「育休男子.jp」というウェブメディアを立ち上げて自身の育児経験や育児に関するニュースを発信している。

 実際、高橋さんが育休を取得すると、同僚は「うちに男性が育休を取れる制度があったんだ」。その時点ですでに、数十人の男性が育休を取得していた。

「社員は5千人以上。同僚男性が育休を取得したという社員はそれほど多くないのでしょうね。男性の育児休業が法律で認められていること自体を知らない人も多いと感じました」

 と高橋さん。

「『設備、制度、文化』の三つがそろっていないと、仕事と子育ての両立がしやすい会社とは言えない」

 というのが実感だという。

AERA 2017年9月18日