
仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号は「仕事と子育て」を大特集。「職育接近」が最後の切り札になりそうだ。
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もてはやされる「イクメン」も、職場では風当たりが強い。
6歳の長男と4歳で双子の長女・次女を育てる熊本県の団体職員の男性(45)も、職場の無理解に苦しむ一人だ。
上司は、育児を妻任せにしてきた典型的な昭和のサラリーマン。社風も保守的で、男性が子育てを理由に休みを調整すると、いつも「奥さんは?」と聞いてくる。そのたびに、「妻がいるのにどうして君が子どもを見るの」と責められているように感じてしまう。
朝、起きた瞬間から子どもを寝かしつけるまで、するべきことや考えることが多くてフル回転。仕事の細かいことを忘れたり、物をなくしたりすることが増えた。独身の女性部下にいじられつつ、重要書類の再発行を依頼することも珍しくはない。男性は自戒しつつ、こう話す。
「以前はあった仕事の隙間時間や帰宅後のリラックスタイムがないので、記憶した情報を整理する余裕がないんです」
管理職としては、子どもを授かる前から育休による欠員に悩まされてきた。自分の権限が及ぶ範囲で、欠員をカバーする仕組みを作り、当事者とのコミュニケーションも工夫した。子育て中の部下や「きっちり休日を取りたい」「早く帰りたい」という若手の思いも尊重したいが、金曜の夜に「月曜朝までにこの書類のチェックをお願いします」というメールを送りつけてきたり、些細(ささい)なことで休日に電話をしてきたりする様子には、割り切れない思いを抱いてしまう。
「自分の仕事だけは早く片付けたい、管理職なら休みも仕事の電話くらい当然という態度。男性だって管理職だって、子育てしているということへの理解のなさに恐ろしさすら感じます」