文部科学省は11月に開かれた国立大学協会の総会で、新テストの実施案を提示した。同省は17年度初頭に結論を出す予定 (c)朝日新聞社
文部科学省は11月に開かれた国立大学協会の総会で、新テストの実施案を提示した。同省は17年度初頭に結論を出す予定 (c)朝日新聞社
鎌田薫(かまた・かおる)さん(68) 早稲田大学総長/1948年生まれ。早稲田大学法学部卒。専門は民法。教育再生実行会議座長、日本私立大学連盟会長などを務める(写真部・岸本絢)
鎌田薫(かまた・かおる)さん(68) 早稲田大学総長/1948年生まれ。早稲田大学法学部卒。専門は民法。教育再生実行会議座長、日本私立大学連盟会長などを務める(写真部・岸本絢)

 大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集した。

「新テスト」で大学受験はどうなるのか。国立、私立を代表する大学の幹部に、大学経営の観点も交えて語ってもらった。

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 2020年度から導入予定の「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称。以下、新テスト)の源流は、13年に出された教育再生実行会議の第4次提言にある。高校生全員が身につけるべき基礎レベルと、大学での学びに必要な発展レベルの学力を測る2種類のテストの創設、1点刻みの選抜からの脱却、多面的な評価など大学入試改革の大方針を打ち出した。その座長を務めたのが鎌田薫・早稲田大学総長だ。

──新テストの実施案を巡ってさまざまな議論がありますが、どうみていますか?

「記述式」について40字か、80字かといったところにばかり関心が集まっていますが、教育再生実行会議の立場からすると、原点を見失わないでほしいという思いがあります。

●原点は高校教育改革

──原点とは?

 大学入試と高校教育、大学教育の三位一体の改革です。本来大学入試とは「こういう力をつけてきてほしい」という、高校生以下の子どもたちに対するメッセージです。そこをあるべき姿に変えることで、従来の高校教育を変えていくというのが改革の趣旨です。

 記述式は、教育再生実行会議の提言には入っていませんでしたが、文章を書くには前提条件を理解し、自分なりの考えをまとめて人に伝える、つまり思考力・判断力・表現力が必要です。そうした力を高校段階から鍛えられるよう授業を変えていく。それが記述式問題を導入する意義のはずですが、いまの議論は大学がいかに効率的に入学者を選ぶかという技術論に傾いているようにも見えます。

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