●実力は世界一じゃない

「まあ余りもの同士がコンビを組んだのですが(笑)」と高橋は笑うが、現地に応援に来ていた恩師の田所光男氏(聖ウルスラ学院英智中高バドミントン部総監督)は2人を組ませた理由をこう話す。

「松友はおとなしい性格で、コツコツやるタイプ。一方の高橋は明るく親分肌。同級生は仲が良いとかばい合ってしまうので、性格が違っても、学年が違うほうがうまくいくと思いました」

 それから10年、高校卒業後も同じ進路を選択し、ロンドン五輪に出られなかった悔しさなどをバネに努力を重ねてきた。プレーの特徴も正反対で、後衛の高橋が広くカバーして相手を揺さぶり、前衛の松友が鋭い読みで決めるパターンを磨いた。

 もちろん、長く続けるうえでの難しさもあっただろう。だが、2人に大きな溝が生まれることはなかった。何がよかったのか。

「ダブルスは2人で一つだと思うので、性格が真逆でも、バドミントンに対しての意識が一緒じゃないと成り立たない。その点で、2人が本当に五輪で金メダルをとるという目標を持ち続けたことで、ここまで来られたのだと思います」(高橋)

 松友も「先輩(高橋)とだから迷いなく動ける」と言えば、高橋はさらにこう話す。

「実力的には世界一じゃないですが、2人の連係は世界一だと思っています。だから、どんな状況でも自分たちの力を出せば負けない自信がありました」

 金メダルを手にし取材に応じる2人を見ても、大らかな高橋に対し、クールだが時折はにかむような笑顔を見せる松友の姿はいかにも好対照に見えた。

 お互いがお互いを受け入れ、見事に調和した結果が金メダルだったのだ。(スポーツジャーナリスト・栗原正夫=リオデジャネイロ)

AERA  2016年8月29日号