胃がんの生存率推移
胃がんの生存率推移
大腸がんの生存率推移(直腸がん・結腸がん含む)
大腸がんの生存率推移(直腸がん・結腸がん含む)

 国立がん研究センターによると、2015年の1年間に新たにがんと診断された患者数の予測値は、98万2100人。日本人の2人に1人ががんになると言われ、もはや国民病である。1月には「10年生存率」も公表され、これまでの目安だった5年生存率よりも長い目でがんを捉えることが可能になった。6月29日には都道府県ごとの罹患数と罹患率の推計も発表されるなど、がんをめぐる情報は日々、更新されている。今回は、より新しい「5年生存率」と組み合わせて正しい読み方を知り、がんとの向き合い方を考えたい。

『AERA7月11日号』の大特集は「いま知りたい がん新常識」。8大がんの生存率について解説している。今回はその中から、「胃がん」と「大腸がん」を紹介する。

【胃がん:補助化学療法に効果 菌の除去で防げる】

 これまで一般的だった5年生存率が示していた5年目の値と、10年生存率が示す10年目の値は、胃がんではほぼ同じだった。このがんに関しては従来通り、「治療から5年を過ぎれば、ひとまず安心していい」と言えそうだ。

 胃がんの専門医で、がん研有明病院(東京都江東区)の比企直樹医師は、

「胃がんの場合、5年を過ぎてから再発するのは進行の遅い胃がんの細胞が腹膜、肝臓、リンパなどで育った場合などに限られます」

 と話す。

 さらに、抗がん剤の進歩で、5年目までに生存率が下がるペースは以前よりも緩やかになっているという。

 標準治療は、初期は身体に負担の少ない内視鏡治療や腹腔鏡下手術。進行した場合は開腹手術が必要だが、術前に抗がん剤を投与する術前補助化学療法も広がりつつある。

「メインの腫瘍を切除する前に、周囲に散らばっているがん細胞(予備軍)に兵糧攻めのように働きかけます。その結果、手術手技が楽になったり、散らばるがん細胞からの再発を減らしたりできる。効果は大きい」(比企医師)

 胃がんは、未然に防ぐ努力もできる。

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