胃がんを引き起こす可能性のあるピロリ菌は、胃の粘膜に生息する菌だ。一度感染してしまうと多くの場合、胃の中にすみ続けるとされている。いまはその菌の有無を、血液検査や呼気テスト、便の検査で調べることができる。
「ピロリ菌=がん」ではないが、早い段階でピロリ菌を取り除いておくことは、将来への備えとして考えておきたい。
【大腸がん:治癒の確率は高いが患者も死亡数も増加】
大腸がんと診断された人は、2015年の予測値で男女合わせて13万6千人。がんの中でも最多の数字だ。増加の要因は肉食や油脂類の摂取の増加など食事の欧米化とされ、発症リスクは男女とも50代以降で上がる。
だが、自治医科大学内科学講座消化器内科学部門主任教授の山本博徳医師は言う。
「大腸がんは手術によって治癒する確率が高く、見つけがいのある代表的ながんです」
転移・再発の目安は5年。早期治療、早期発見が有効な対策しやすいがんでもある。肝炎や肝硬変などの慢性疾患が下地にあることの多い肝臓がんとは違い、大腸がんはがんさえ治療すれば健康というケースも多い。
ただ、山本医師によれば、
「検診を受けず、貧血や体重減少などの症状が出てから病院に行き、ステージが進んだ段階で発見されるケースが多い」
早期に見つければがん細胞を取り除く根治治療ができる。3期までは予後もいい。他臓器に転移する4期になると生存率は急激に低下し、化学療法がメインになる。2期、3期でも予後が悪いのは進行の速いタイプだった場合。潰瘍性大腸炎のある人も注意が必要だ。
「慢性の炎症があると、細胞が修復を繰り返すうちに遺伝子に変異が起こり、がん化のリスクが上がる。潰瘍に紛れて見つけにくいうえ、進行が速く悪性度の高い未分化型のがんが見つかることも多い」(山本医師)
潰瘍性大腸炎なら、寛解、粘膜治癒まで持ち込むことだ。
化学療法の進歩でよい例外は増えてきた。山本医師は言う。
「手の施しようがなかった4期のがんが抗がん剤治療で縮小したり消えたり、カンファレンスで症例の写真を見て驚くことが増えた。2000年以前と現在では格段に違う」
それでも、大腸がんの死亡者数は女性で1位、男性では肺がん、胃がんに次ぐ3位。早期発見、早期治療の徹底が課題だ。(編集部・熊澤志保、古田真梨子)
※AERA 2016年7月11日号