新日本監査法人本部が入るビル。所属する会計士にも1~6カ月の業務停止の処分が出されたのに比べると、法人への処分は甘く見える/東京都千代田区(撮影/写真部・岸本絢)
新日本監査法人本部が入るビル。所属する会計士にも1~6カ月の業務停止の処分が出されたのに比べると、法人への処分は甘く見える/東京都千代田区(撮影/写真部・岸本絢)

 東芝の不正会計を見抜けなかった新日本監査法人が処分された。重そうな処分にも見えるが、金融庁は上手に的を外していないか。

「下記7人の公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した」

 2015年12月22日、東京・霞が関の金融庁会議室。監査法人を担当する企業開示課の担当者が、東芝の不正決算を見逃した新日本監査法人への処分について説明した。

 初めに名が挙がったのは常務理事で、監査チームのリーダー格だ。監査体制に責任を持つ大物がいながら、なぜ不正を見逃したのか。金融庁の見立てを要約すると、「長年担当した会計士が、東芝を過信し、説明や資料を批判的に検証できなかった」とはいえ、悪いのは東芝で、監査法人はだまされた被害者。そんな筋書きになっている。

 そうだろうか。世間は監査法人の「共犯」を疑っている。

「私たちも疑ったが、故意を立証する事実は見つからなかった」

 金融庁の担当者は言う。結局、下された処分は、新規契約禁止3カ月と業務改善命令、21億円の課徴金。監査法人に課徴金が科されるのは初で、重い処分にも見えるが、

「業務停止に踏み込まない甘い処分。課徴金で重く見せた」

 そう見る業界関係者は少なくない。

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