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過去の欠陥マンション建て替え 成功の裏に理事の苦闘

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耐震偽装で退去勧告(東京都中央区)2004年、ヒューザーが販売。全36戸。姉歯秀次本建築士による構造計算書の偽造で耐震強度が「0.41」とされ、住民に退去勧告が出された (c)朝日新聞社

耐震偽装で退去勧告(東京都中央区)
2004年、ヒューザーが販売。全36戸。姉歯秀次本建築士による構造計算書の偽造で耐震強度が「0.41」とされ、住民に退去勧告が出された (c)朝日新聞社

 傾斜マンション問題が大きな波紋を呼んでいる。耐震偽装など過去の欠陥マンションでも、建て替えは容易ならざるハードルだった。成功例を見ると、理事の苦闘があった。

 過去に住民を建て替えの渦に巻き込んだ出来事として、10年前に発覚した耐震偽装事件がある。国土交通省は、耐震強度が偽装された建物は「震度5強の地震で倒壊の恐れがある」と表明し、建物の使用禁止と取り壊しを命じた。11棟(計約300戸)の分譲マンションが建て替えを迫られたのだ。

 そのなかに「グランドステージ(GS)茅場町」(13階・36戸・東京都中央区)もあった。公務員の夫と暮らしていた士野楓さん(57)は、東京駅から徒歩圏内で100平方メートルの広さと手頃な価格が気に入って購入した。

 しかし、入居から3カ月も経たないうちに驚天動地の事件が起き、士野さんは立ち上がる。

「私たちは穴の開いた船に乗り込んだ者同士。問題解決に向けて一体となりましょう」と自ら手を挙げ、管理組合の理事になった。いつでも相談に対応できるようにと、自室を24時間開放。毎朝9時、数人の女性が士野家に集まり、善後策を練る。取り壊しのため、06年1月から住民は中央区が用意したURなどの賃貸住宅に分散した。

 難題は建て替えプランの作成だった。従前の敷地に建て替えると建築規制で各戸の広さは約2割減る。プラン作りが難航しているとき、西隣のオフィスビルと合同で再開発して元の広さを確保する案が浮上した。ただし時間がかかり、自己負担額も増える。

 再開発か、単独での建て替えか……。士野さんは仮住まいの住民を一軒ずつ訪ね、「この悔しさを未来のビジョンにかけよう」と説得した。最終的に全員一致で再開発に同意した。

 GS茅場町は11年11月、20階建ての複合ビルに生まれ変わり、ほぼ全戸の住民が戻ってきた。一戸当たりの追加負担は平均2200万円で、「二重ローン」は残った。士野さんは「最後まで全員を連れて戻ることに人生をかけました」と晴れやかにう。

AERA 2015年11月30日号より抜粋


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