坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと

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 1995(平成7)年に発生し、当時の日本社会を戦慄させた地下鉄サリン事件。死者13人、6000人以上の被害者を出し、今もなお後遺症に苦しむ人が存在します。その一方で、平成生まれの若い世代の中には、事件の詳細を知らない方も多いのではないでしょうか?
 そんな若い世代に向けて、ジャーナリスト・江川紹子さんが、岩波ジュニア新書より刊行した近著が『「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち』。本書では、オウム真理教による一連の事件を振り返るとともに、ごく普通の若者たちが、カルトに傾倒していった経緯を丹念に辿っています。
 事件当時は、優秀な医師や科学者、有名大学の理系出身者など"エリート層"の若者が数多く入信していたことも世間の注目を集めました。教団側でも、広告塔に利用できそうな医師など高学歴な人材をターゲットに勧誘していましたが、20代で入信した実行犯の多くは、もともと反社会的な思想を持った人々ではなく、むしろ真面目で誠実な若者たちだったと言います。
 例えば、地下鉄サリン事件や、その6年前の1989(平成元)年に起きた坂本弁護士一家殺害事件実行犯の1人である中川智正元死刑囚は以下のように述べ、法廷で号泣しました。
「私たちは、サリンを作ったりとか、サリンをばらまいたりとか、人の首を絞めて殺したりとか、そういうことのために出家したんじゃないんです」(本書より)
 本書では、端本悟元死刑囚の「あの時、自分の感性を信じるべきだった」(本書より)という証言や、元信者の「自分のアタマで考えることを放棄してしまった」(本書より)という手記の言葉を踏まえ、信者自身も教団への疑念や違和感を持っていたにも関わらず、そこで踏み止まることができずに凶悪犯罪にまで突き進んでしまった状況を、以下のように述べています。
「人間の心は、特異な環境に置かれれば、残酷な行為もしてしまう弱さを持っているのでしょう。誠実で真面目な人柄や、頭のよさや知識の量、社会経験の豊富さで、その弱さを補えるとは限りません。自分にもそういう心の弱さがあると自覚して、このような特異な環境に陥らないように努めるしかないのかもしれません」(本書より)
 また、近年はオウム真理教後継団体以外でも、自己啓発セミナーやスピリチュアル団体などカルト性が高い団体が存在することに言及。大学のサークル活動や、災害地域への募金活動・署名活動などのボランティア団体を装って近づいてくる事例もあると警鐘を鳴らしています。カルトに取り込まれてしまうことは、決して対岸の火事ではなく、誰しも可能性があることなのかもしれません。
 いわゆる"Z世代"と呼ばれる若い世代はもとより、それより上の世代が読んでも充分に読み応えがある本書は、地下鉄サリン事件から24年が経過し、当時の記憶も薄れつつある今こそ手に取りたい1冊と言えるでしょう。


(記事提供:BOOK STAND)

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