本県を中心とした記録的な大雨による影響で、球磨川(くまがわ)が氾濫し、八代市(やつしろし)、球磨村(くまむら)、人吉市(ひとよしし)など同県南部は甚大な被害を受けた。

【図版】水害の被災地帯の多い自治体ランキング

熊本県の球磨川の氾濫の様子(撮影/稲葉洋一)
熊本県の球磨川の氾濫の様子(撮影/稲葉洋一)

 警察庁によると、6日までに水没した球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の入居者で心肺停止状態だった14人を含む22人の死亡を新たに確認した。亡くなった人は計44人になった。1人が心肺停止で、10人が行方不明になっている。

 八代市在住で天文台に勤務する稲葉洋一さんは4日朝から球磨川の氾濫で大きな被害がでた同市坂本町などの様子を撮影して歩いた。

濁流にのみ込まれ、水没した民家(撮影/稲葉洋一)
濁流にのみ込まれ、水没した民家(撮影/稲葉洋一)

「坂本町が深刻な事態になっていると聞き、知人がいるので行ってみました。途中、道が寸断されていたので、山の中の林道を歩いて、坂本町の高台に到着できました」(稲葉さん)

 球磨川沿いの国道、県道や民家は一面、水没していたという。

凄まじい勢いの濁流(撮影/稲葉洋一)
凄まじい勢いの濁流(撮影/稲葉洋一)

「坂本町の中心は、いつもは普通に車で走っています。しかし、八代市坂本町支所は建物の2階近くまで水につかり、周囲は乗用車などがプカプカと浮かび、家も流されていた。信じがたい光景でした」(同前)

 そこから、球磨川近くに行くと、坂本橋と深見橋が流されていたという。

水没した八代市坂本町(撮影/稲葉洋一)
水没した八代市坂本町(撮影/稲葉洋一)

 大雨特別警報は解除されていたが、濁流が押し寄せていた。JR肥薩線、坂本駅も駅舎も水が押し寄せ、線路すらみえない状態だった。

 その後、稲葉さんは八代市街方面に向かった。

「球磨川にかかる中谷橋はあたりの普段の水位は、川の底に近いくらいです。それが橋を越える高さまで、水位が増えていた。周囲には人影もなく、壊滅状態。堰も水があふれ乗り越えていた。そこから避難所となっている坂本中学校に向かうと、お年寄りの人たちが、自衛隊のヘリで避難してきていた。坂本町は球磨川に飲み込まれたようでした」

水に飲みこまれた坂本町(撮影/稲葉洋一)
水に飲みこまれた坂本町(撮影/稲葉洋一)

 4日になって、坂本町に通じる一部の道が通れるようになったという。

 しかし、稲葉さんはその様子をこう話す。

「道はひざ下くらいまで冠水している。球磨川をはさみ坂本町支所がある方には今日も行けない。まだかなりの人が取り残されているようだ。頻ぱんに自衛隊のヘリが上空を飛んで捜索しています」

自衛隊に助けられる住人(撮影/稲葉洋一)
自衛隊に助けられる住人(撮影/稲葉洋一)

 稲葉さんが撮影した写真には自然災害の信じがたい猛威が写されていた。取り残された人々の一刻も早い救助を祈りたい。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事
(死者、行方不明などの情報を加筆)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら