週刊朝日 2023年2月17日号より
週刊朝日 2023年2月17日号より

「起業の意欲を持った学生たちが切磋琢磨するコミュニティーとして機能している」と顧問の上原氏。初代部長の長曽我部さんも意義をこう語る。

「初めは経験や知識の共有が目的でした。ですが、いまでは悩みを話したり、助け合ったりするなど、それ以上の効果が生まれています。個人的には、部でも最年長なので、後輩たちに背中を見せるって言ったら大げさですけど、襟を正される思いで、刺激をもらっています」

 東海・中部地域で実施されているビジネスプランコンテストで賞を受賞する部員も多い。「学生起業家の登竜門」とされる「キャンパスベンチャーグランプリ」の中部大会では、過去2年、部員が大賞を受賞している。

 起業部からはすでに2社が生まれた。うち一社が、長曽我部さんが21年に立ち上げた「FiberCraze(ファイバークレーズ)」だ。

 岐阜大が培った基礎研究「繊維やフィルム素材の多孔化技術」を活用して、繊維の素材にナノサイズの穴をあけ、防虫成分を閉じ込めた機能性繊維などを開発している。長曽我部さんは現在、大学院生と経営者の二足のわらじを履く。

「岐阜のような“保守的”な傾向の地域において、長曽我部くんが起業家のロールモデルになってくれたことは非常に大きい。彼が初めの一歩を踏み出してくれたおかげで、みんながそれに続いている。身近な存在から、起業マインドが伝播しています」(上原氏)

 今年も1~2社、起業部発のベンチャー企業が誕生する予定だ。その勢いをさらに高めるため、上原氏は昨年度からある取り組みを始めた。

「大学内にある研究シーズ(事業化できる可能性が高い研究)を洗い出し、リストを部員に開示しました。起業意欲の高い学生と研究シーズを結びつける取り組みです。うまくいけば、起業を志す学生が、事業化を意識した上で研究室を選ぶようになるかもしれない。この流れができれば、岐阜大の研究成果を生かしたベンチャー企業をもっと生み出せると思います」

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