■元気なうちに思いを伝えて
――役者人生も40年超。時代劇、家族ドラマなど、さまざまな役を自在に行き来する。本作ではろくろをまわし、見事な腕前を披露した。
もともと陶芸に興味はあったんです。以前から佐賀県唐津の陶芸家・中里太亀(たき)さんと親しくさせていただいていて、唐津の工房にお邪魔して、一緒に酒を飲んだりもしました。でも自分でやるのは初めてで、最初のシーンは20テイクくらい撮ったんじゃないかな。撮影後に土とろくろをいただいたので家でもやろうと思っているけど、まだ手をつけられていません。
演技もね、いまだにうまくはいかないんですが、不必要に緊張したり、周りが見えなくなったりするようなことはなくなってきたかな。僕は役を引きずらないタイプなんです。撮影中は役のことばかりを考えて、なかなか私生活と仕事を完全には切り離せないけど、終わったら「後悔してもしかたない。次、頑張ろう!」とスッパリ切り替えます。
ただ方言が心地よかったりすると、何かの折に出ることもある。いまも何かをバシッと決めたいときに「孤狼の血」の広島弁が出たりします(笑)。
この映画を観た後、久しぶりに誰か大切な人に連絡してみようかな、会いに行こうかなと思ってもらえればうれしいですね。何があるかわからない世の中で、元気なうちに自分の思いを伝えておくことの大切さを感じてもらえればと思います。(フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2022年12月30日号