常連さんが三線を弾いたり、沖縄民謡を歌いだすのは、20時を過ぎた頃から(撮影/小山風子)
常連さんが三線を弾いたり、沖縄民謡を歌いだすのは、20時を過ぎた頃から(撮影/小山風子)

 そんなお店の中の一軒が、「八ちゃん」。沖縄から上京してきた初代女将のあとを継いだ沖縄二世の石渡文子さんがきりもりする沖縄居酒屋だ。

わぎり(900円)。豚の尻尾の〝輪切り〟。「〝尻尾〟だとそのまますぎるでしょう(笑)」(石渡さん)(撮影/小山風子)
わぎり(900円)。豚の尻尾の〝輪切り〟。「〝尻尾〟だとそのまますぎるでしょう(笑)」(石渡さん)(撮影/小山風子)

「ミミガー(豚の耳)」「センマイ(牛の胃袋の細切り)」などの沖縄らしいおつまみから、「ゴーヤーチャンプルー」や暢子も作っていた「麩チャンプルー」など、沖縄料理の代名詞とも言えるチャンプルー(炒め物)料理、豚の尻尾を輪切りにして煮込みにした「わぎり」まで、沖縄の家庭の味が並ぶ。

 石渡さんは、沖縄二世なので、沖縄に住んでいたことはないそう。お店に並ぶ沖縄料理をすべて「沖縄出身の母が作っているのを見て、覚えました。最初は見よう見まねでしたけど、なんとなくこなれてくるもんですね」。その味が沖縄出身の鶴見の人たちから「懐かしい」と大好評。2代にわたって地元民に愛されるお店になった。最近では、「少し前までは常連さんしか来ない店だったのに、『ちむどんどん』が放送されてからは、常連さんが入れないくらい、他県からのお客様が多い」と、顔をほころばせる。

 常連さんたちは、夜遅く、20時過ぎから増えてくる。ビールから泡盛にお酒が代わる頃、お客さんがカウンターで三線を弾き、沖縄民謡を歌いだす。その三線や歌声は、内地出身者には「プロ並み」に聞こえるが……。「ありがと(笑)。でも沖縄の人は家族の誰かが弾けるから、自然に覚えるし、みんなこれぐらい当たり前よ~」(常連さん)

 三線を聞きながら泡盛を飲んでいると、まるで沖縄に来たような、のんびりした気持ちに。「今日はこれで仕事を終わりにしてもなんくるないさー」と感じる、一日の終わりでした。

所在地:鶴見区浜町1-8-8/営業時間 17:00~23:00/定休日 火曜日、水曜日

(本誌・工藤早春)

週刊朝日  2022年7月8日号