例外措置がある場合は、わずかとはいえ年金額が上がっていたが、今度は23年度をピークに逆に年金額が下がっていく。28年度には当初の受給額を下回り、40年代まで微減状態が続く。

 結局、年収500万円世帯は開始時の「21.57万円」が35年後には「20.86万円」に、同700万円世帯では「25万円」が「24.91万円」になってしまう。もちろん、現役の平均収入が35年間で6割以上上がるのは同じである。

「フル適用」は将来世代の年金財源を確保するための策だが、これでは足元の受給世代の生活が危ういものになってしまう。

「本当の年金額」は、ずいぶんと寂しいものになりそうだ。しかし、これはまだほんの「序の口」だった。この年金額を実際の生活レベルに落とし込むと、さらに衝撃的な「事実」が浮かび上がってくるのだ。(以下次号)(本誌・首藤由之)

*ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員が試算。経済前提は2019年財政検証の「ケースV」【物価上昇率0.8%、賃金上昇率(実質<対物価>)0.8%、経済成長率(実質)0.0%。ただし28年度までは内閣府「中長期の経済財政に関する試算」による】、マクロ経済スライドは厚生年金が32年度まで、基礎年金は58年度まで。対象世帯は19年度に65歳になる同い年の専業主婦世帯。「年収500万円」と「年収700万円」は生涯(20~59歳)の平均年収。「現役の平均月収」は額面。マクロ経済スライドを「フル適用」した場合の年金額は、マクロ経済スライドの停止年度は再計算せずに、毎年の受給者の年金額に機械的にフル適用させた金額

週刊朝日  2022年6月17日号

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