フィンランドのマリン首相が訪日し、11日に岸田文雄首相と会談した。女性の首相で36歳という若さ。しかも、これまで貫いてきた非同盟政策を変更し、米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)に加盟するという歴史的大転換を進めていることで日本でも注目を浴びる「時の人」だ。
欧州では、同じく非同盟のスウェーデンやアイルランドでもNATO加盟の可能性が高まっている。また、永世中立のスイスが対ロシア経済制裁に加わり、同じ永世中立のオーストリアもアイルランドとともに、EU即応部隊(国際危機に対応するEUの軍隊)創設時には参加すると表明した。
このように欧州の中立国や非同盟諸国が国家の外交軍事政策の大転換を行うのを見ると、日本も憲法を改正して外交安保政策の大転換を図るべきだというタカ派の議論が勢いを増す。
そんな雰囲気を象徴するのが、「日本が(防衛)予算を増やさないとなったら“笑いもの”になる」という4月21日の安倍晋三元首相の発言だ。
しかし私は、これとは全く異なる見方をしている。ウクライナのゼレンスキー大統領の日本国会での演説にそのヒントがあった。彼は、世界各国の議会での演説で必ず武器提供を要請した。だが、G7の一角を占め米国の同盟国でもある日本に対してはなぜかこれをしなかった。その理由について、駐日ウクライナ大使は「われわれは(戦力不保持などを定めた)憲法9条や政治環境を認識している」と語っている。日本の憲法9条や「政治環境」、すなわち、戦争に加担することに非常に慎重な日本の世論を尊重したのだ。
日本の平和主義が憲法9条を通して世界に発信され、それが尊重されるというのは、単なる理想ではなく、現実に起きていることがわかる。そこで私は、先日会ったウクライナ人とその支援者の話を思い出した。日本に一番期待するのは何かと聞くと、ウクライナ人は日本が大好きだからこそ、戦争への協力ではなく今すぐ必要な人道援助と息の長い復興支援を期待するという答えだった。