棒針やかぎ針で、さまざまなものを編み出せる編み物。昔は「おばあちゃんの趣味」の代名詞だったが、今はプチ編み物ブームが起きているという。さらには、手先を使う動きから脳への刺激となり、「脳トレ」の効果もあるという。
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東京五輪で、男子シンクロ高飛び込み金メダリストのトーマス・デーリー選手(イギリス)が観客席で編み物をしている姿が話題になった。
また、ケガで陸上部を辞めてしまった男子高校生が、あるきっかけから編み物を始めるマンガ『ニッターズハイ!』(KADOKAWA)も登場。じわじわと編み物ブームが高まっている。
そんな中、大手手芸専門店「ユザワヤ」が、「脳トレ手芸シリーズ第2弾 編み物キット」を昨年10月に発売。認知機能の向上に役立つといい、好調な売れ行きを見せている。
これは、2020年12月に発売された「クロスステッチキット」の続編。クロスステッチキットは、発売9カ月で8800点という予想以上の売り上げを記録した。
いずれも「脳トレ」で知られる川島隆太さん(NeU=ニュー取締役CTO、東北大加齢医学研究所所長《医学博士》)の監修。NeUは脳の活動に関連する研究・商品開発などをする企業で、東北大、日立ハイテクなどが出資している。
「昔から手先を使う手芸は脳の刺激になると言われてきましたが、エビデンス(根拠)がありませんでした。そこで、手芸をしているときの脳の活動を測定して実証し、『脳トレ』になると明記すれば、より手芸に興味を持っていただけるのではないかと考えました」
そう話すのは、ユザワヤ商事専務取締役の畑中宏元さん。新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛が長引く中、自宅でできる手芸が刺激になればと考えたのも理由の一つだ。
「店に来られない人もいらっしゃるので、必要な材料がすべてそろったキットにして自宅で気軽に楽しめるようにしました」(畑中さん)