キットは初級(マフラー)、中級(帽子)、上級(靴下と巾着)の3レベルで各3960円(税込み)。針などを持っていて、好きな毛糸を選びたい人向けに、編み図のみの販売もある。

 かつて手芸が好きだった母に買う人や、親の認知症が気になる人たちも購入しているという。

「ただ『脳トレ』のためではなく、作るものが素敵じゃないと楽しい気持ちで取り組めません。なので、デザインを編み物作家に依頼し、魅力的なものを用意しました」(同)

 開発段階では、NeUと実験を行った。編み物経験者の女性約30人に測定装置をつけ、編み物によって脳が活性化していることを確認した。実験に携わった川島さんは語る。

「脳の前頭前野という部分には『記憶する』『考える』『行動や感情を抑制する』『人とコミュニケーションをとる』といった行動をつかさどる役割があります。前頭前野が加齢などで衰え、認知機能が低下すると認知症のリスクが高まります。編み物などの手芸で指先を動かすと前頭前野の動きが活発化することが明らかになりました。編み図を読み取ることも、空間認知能力を鍛えるのに役立ちます。楽しい気持ちで活動することが、脳にいい刺激になります」

 ユザワヤの一部店舗(蒲田、吉祥寺、立川、横浜、津田沼、浦和)では、NeUが開発した、脳血流を測定できる超小型脳活動センサーを設置。頭にセンサーをつけ、約10分間編み物をして、脳が活性化しているかを確認できるサービスを無料で行っている。

 記者(編み物経験あり)も実際にやってみた。頭につけたセンサーはタブレット端末とつながっており、脳が活性化すると、画面の色が青(鎮静状態)から緑や黄を経て、赤(活性状態)に変化する。

 作り目や表編みなど単純作業のときは青や緑のままだったが、目を数えたり、模様編みをしたり、編みながら人と会話したりすると、赤に変わった。脳の活性化がひと目でわかるとちょっとうれしい気分になる。

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