※写真はイメージです
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 は時々、声を出さずに鳴く様子を見せることもある。人間の耳に聞こえない超音波を発しているのかと思いきや、加隈先生は「声は出ていないと思います」と答えた。

 聴力に優れた猫は、振動数が1万6千ヘルツ以上の超音波領域になるネズミの声も捉えられる。しかし、鳴き声の周波数は聴力ほど広くない。なぜ声を出さずに鳴くのかは、まだわからないそうだ。

 じつは猫の声に関する研究はとても少ない。加隈先生も記憶している有名な研究は1940年代のもので、口を開けずにゴロゴロと鳴いたり、つばを飛ばすような声を出すなど、鳴き方のバリエーションが16種類ほどにわけられているという。

「別の研究では、のどの奥でゴロゴロと鳴くのは、体を癒やすためという説が提唱されています。ゴロゴロ音の波長は、25~150ヘルツの低周波。気持ちのいいときだけでなく、瀕死(ひんし)の状態でも出すことがあること、低周波には骨や組織の修復を促したり、体を癒やしたりする働きがあることから、そう推測されています」

 また、猫を抱いていると、その低周波が伝わって、猫だけでなく、人の体も癒やされる効果があるのではないか、とも考えられている。

 猫にはいまだ謎が多い。鳴き声の意味を知ろうと右往左往する飼い主を眺めながら、猫はしてやったりと思ったり、あきれたりしているのかもしれない。(ライター・角田奈穂子)

週刊朝日  2021年12月31日号