スマホは便利なだけに、上手に使いこなしたい (写真はイメージです)
スマホは便利なだけに、上手に使いこなしたい (写真はイメージです)

 新型コロナウイルスの感染拡大後、スマートフォンの使いすぎが原因で体調を崩す高齢者らが増えている。心あたりがある人は要注意。最初は軽い症状でも、放っておくと大きな病気につながることもある。使い方を見直してみる必要がある。

【スマホを健康的に使うための5カ条はこちら】

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「スマホが気になって眠れない」

 東京都内に住む70代女性は最近、スマホが手放せなくなり、不眠や体調不良に悩まされるようになった。

 使い始めたのは数年前。夫を亡くし、一人暮らしになったのを機に、離れて暮らす娘が心配して契約してくれた。当初は操作にてこずり、使うのは1日あたり2~3時間程度だった。だが夫の死後は趣味の社交ダンスもやめ、家で過ごす時間が多くなっていた。もともと内向的で、友人や知人も少ない。娘ら家族とのやり取りから始まり、ニュースや料理法の検索まで、スマホを使う時間は尻上がりに増えた。

 ついには、夜の間もスマホを枕元に置き、メールやSNSの連絡が来ないか気が気でない状態に。着信がないのに、バイブで振動しているかと錯覚することも、たびたびだったという。

 浅川クリニック(東京都江東区)の院長で、『「スマホ」という病』などの著書がある精神科医の浅川雅晴さんはこう話す。

「スマホの長時間使用が原因で体調を崩す人は増えています。とくに高齢者は要注意。退職して、友人や知人と会う機会も減ると生活のリズムは単調になりやすく、スマホを使う時間が増えやすくなる。コロナでその傾向はより目立つようになりました」

 浅川さんによれば、スマホは短時間で多くの情報を仕入れることになり、脳にかかる負担は大きいという。

「脳はもともと、体験にもとづく情報や物語性のある出来事は記憶しやすい一方、短期間で集中的に覚えるのは苦手な構造です。スマホを使いすぎると一部の機能にばかり負担がかかり、『脳過労』の状態になることがある。加えて、交感神経が優位に働く時間が増え、下痢や便秘、動悸や倦怠感といった症状の原因になります」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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