高橋克実 [撮影/写真部・高野楓菜、スタイリング/中川原寛(CaNN)]
高橋克実 [撮影/写真部・高野楓菜、スタイリング/中川原寛(CaNN)]

高橋:そうなんですよ。僕は最初のスタートからちょっと違いましたね。だから今でも子どものころ見てた映画とかを夜一人で繰り返し見て、「やっぱりいいなあ」と思ってますよ。

林:舞台をこれだけおやりになってるから、最初から舞台の方だって皆さんたぶん思ってますよね。

高橋:文学座とか俳優座とか、新劇の本流に行かないと「太陽にほえろ!」に出られないんじゃないかといっとき思っていて……。

林:松田優作さんみたいに。

高橋:はい、そうですね。それで新宿の紀伊國屋書店で文学座の受験の本を立ち読みしたら、さっぱりわからないんですよ。「かもめ」とか作品名が並んでて、反対側に作者が書いてあって、「線で結べ」とかいうんですけど、何のことかぜんぜんわかんなかったんです。戯曲自体読んだことがなかったですから、これは絶対ダメだ、何人か集まって劇場を借りて表現するほうが早いなと思って、だから最初はコントみたいなのがスタートでした。

林:へぇ~、知らなかったです。

高橋:それから所属した劇団離風霊船(りぶれせん)の作品が岸田國士戯曲賞を受賞して、そのころから真剣に舞台に取り組むようになりました。

林:そしてすぐ映像でも売れるようになったんですか。

高橋:いや、それはずいぶんあとです。NHKの連続ドラマの「新銀河」で、林さん原作の……。

林:「トーキョー国盗り物語」(93年)に出ていただいたんですよね。沢口靖子さん主演の。でも私、その話を、前に出ていただいたとき(08年)にうかがって、そのあといろいろ考えたんですけど、高橋さんどこでお出になっていたのか、記憶がないんですよ。

高橋:だって、途中でいなくなる役でしたもん(笑)。いちおうセミレギュラーみたいな役だったんですが、ストーカーみたいな役で、結局、沢口さんに気持ち悪がられていなくなっちゃうんです。

林:そうでしたっけ。

高橋:僕、撮影現場が初めてで、映像の「つながり」のルールとかがまったくわからなくて、何度やってもできなかったんですよ。たとえば、二人で食事をしているシーンで、「こっちから返します」(カメラを移動して、同じシーンを別方向から撮る)というときに、「さっき同じセリフのとき、右手でこれ持ってましたよ」とか記録さんに指摘されて、NGを連発したり、ほんとに苦いデビューというか……。

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