周りから「ナース磯辺」って呼ばれてるのを聞いた時は、情けなさからなのか感謝からなのか、涙がこぼれてきた。結婚する時は、そんな切なさなんて想像もしないよね。

 飯を一緒に食ってて、ふと「僕がいなくなったらこいつは一人でつくねんと食べていくのかな」って思う時があるよ。子どもがいないから、余計に心配しちゃう。

 せめて経済的には困らないよう僕なりに仕事も頑張ってきたし、「今のマンションを売ってな、その現金をなんとかしてな」っていろいろ言うんだけど、女房は「大丈夫大丈夫」って全然聞かないね(笑)。

 でも、心配してもきりがない。遅かれ早かれ夫婦は必ず別れが来る。その時は「じゃあな、お世話になったな」って言わないとね。だから年を取ると、一日一日が愛おしくなるんだよな。そばにいてくれるだけで、感謝でいっぱいです。

(構成/本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2021年5月28日号

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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