「昭和歌謡を聞かせたらすぐ寝ちゃった」妻とのツーショット (提供)
「昭和歌謡を聞かせたらすぐ寝ちゃった」妻とのツーショット (提供)

 俳優の北村総一朗さん(85)は52歳の時、同じ劇団の後輩で22歳下の磯辺万沙子さんと結婚した。年を重ねた今だからこそ抱く、「不安」と「感謝」があるという。

【写真】「年の差婚」といえば45歳差のこの夫婦!

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 最初はお互い全然意識してなかったんだよ。でも僕がC型肝炎で突然入院することになった時、藁にもすがる思いで近くに住んでた彼女に電話したんだ。「荷物を持ってきてほしい、家にいる2匹のの世話も頼む!」って。

 そしたら2カ月間毎日病室に来てくれて、掃除も洗濯も全部してくれて。結婚するんだったらこの人だと思ったんだよね。

 それまでいろいろ恋もしてきたけど、僕は子どものころ両親が離婚して苦労したから、結婚にすごく慎重で。でも思い切って、病院のベッドで「結婚してくれ」って告白した。

 そしたら彼女のお母さんがすぐ飛んできたから、ベッドに正座してお願いして。退院して、ワシントンホテルでご挨拶したお父さんも、「よろしく頼む」って認めてくれたんだ。

 お母さんは僕の6歳上、お父さんは12歳上。結婚式でバージンロードの様子を見た人はみんな、「新婦をまるで父から父に渡すみたいだ」って言ってたな(笑)。

 精神面で年の差を感じることはないね。女性って、その時々で母にも嫁にも娘にもなれる不可思議な偉大さがある気がする。

 唯一ギャップを感じたのは、音楽。僕は昭和歌謡専門だったのに、感化されて一緒にサザンオールスターズのライブに行ったり、椎名林檎なんか好きになっちゃったり。King Gnuの「白日」も教えてもらったけど、テンポが速すぎて歌えないんだよ。悔しくってね。そうやって感性を刺激してもらっています。

 愛情表現はちゃんとするよ。朝起きたら「おはよう」って抱擁するし、お互い「大好きだよ」って言う。テレビを見ながら手も握る。生きるって不安だからさ、愛されてるって実感し合うのは大事なことだと思う。

 僕は、結婚してから前立腺がんやら心臓の手術やらずいぶん病気をしてね。女房はのほほんとおおらかな性格だから、不安な様子は見せないんだけど、そばにいれば心は痛いはずなんだよ。そんな思いをさせるのはつらいんだよ。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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