先行接種を始めた国立病院機構東京病院 (撮影/写真部・高野楓菜)
先行接種を始めた国立病院機構東京病院 (撮影/写真部・高野楓菜)
(週刊朝日2021年3月19日号より)
(週刊朝日2021年3月19日号より)

 国内で新型コロナウイルスワクチンの先行接種が始まり、3月10日までに医療従事者約14万9千人が接種した。

【一覧表】コロナワクチン 臨床試験における発症者数と有効率はこちら

 今月初め、国立病院機構東京病院(清瀬市)の接種会場を訪れた。同病院では、職員628人の87%が接種を希望している。

 接種希望者が、問診からワクチンを接種するまでの時間は2~3分。1時間ほどで36人がワクチンを打ち終えた。

 この日接種した30代の看護師の女性は、接種するか少し悩んだという。

「看護師でも怖いと感じているので、一般の人はもっと怖いと思う。だから私たちが先に接種して、何もなかったって言いたい。ワクチン接種が進めば、遠くの両親にも会えますしね」

 同病院感染症科部長の永井英明医師によると、これまで副反応などで問題は起きていないという。

 2月中に希望者全員の接種を終えた国立病院機構三重病院(津市)。感染症が専門の谷口清州医師に接種者の様子を聞くと、痛みがあったのが約8割。このうち5割が軽度で、強い痛みがあったのが約3割だった。谷口医師は、ワクチンを接種した理由をこう話す。

「当院は新型コロナの重点医療機関なので、常にコロナの患者さんが入院しています。そのため一般の医療機関より感染リスクが高い。もちろん、接種前に今回のワクチンのことは調べました。有効性も副反応もわかった上で決めたことで、危ないと思ったら打ちません」

 昨今、後遺症の問題が深刻化している。それも接種を決めた一因だ。

■効果・安全性

 現在、国内での接種が始まった米ファイザーと、製造販売の承認を厚生労働省に申請した米モデルナのワクチン(武田薬品工業が輸入、販売)は、いずれもm(メッセンジャー)RNAを用いている。このワクチンは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクたんぱくの遺伝子を人工的に複製して作られたもの。体内でこの遺伝子を元にたんぱくが合成され、このたんぱくに反応し、コロナに対する免疫ができる。

 対して、英アストラゼネカ(承認申請中)や、米国で接種が始まった米ジョンソンエンドジョンソンのワクチンは、ウイルスベクターを用いている。これは、感染力はあるが病原性のないウイルス(今回はアデノウイルス)の一部に、スパイクたんぱくの遺伝子を組み込んだワクチンで、mRNAワクチンと同じようにたんぱくが作られ、コロナの免疫ができる。

 ファイザーとモデルナ、アストラゼネカのワクチンは、2回接種が基本。ジョンソンエンドジョンソンは1回での接種が始まっている。

 ワクチンを打つかどうかを判断する材料となるのが、有効率と安全性だ。

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