有効率について、免疫に詳しい宮坂昌之医師(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)が説明する。

「ワクチンの有効率は、“ワクチンを接種したグループと、接種しなかったグループを比較して、どれくらい発症者を減らせたか”を見たものです。95%が予防できるという意味ではありません」

 ファイザーの臨床試験を例にとると、ワクチンを接種したときの発症率が、接種しないときよりも95%減ったということだ。

 この臨床試験で見ているのは発症者で、感染者ではない。感染が予防できたかを知りたいところだが、宮坂医師が語る。

「例えば、モデルナは一部の被験者にPCR検査を実施した結果、感染が著しく減ったことを報告しています。イスラエルなどのデータからも、ワクチンには感染や重症化も予防できるという結果が上がってきています」

 一方、先の臨床試験では、局所反応(接種場所の痛みや赤み、腫れなど)、全身反応(発熱や頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)、筋肉痛、関節痛など)が報告されている。

 国内で先行接種した約3万人では、皮膚や口腔(こうくう)内のアレルギー反応、冷感・悪寒戦慄(ふるえ)、じんましんがそれぞれ1人。3月2日には60代の女性がワクチン接種後にくも膜下出血で亡くなったと報じられたが、ワクチンとの因果関係は不明だ。

 副反応のなかには、「免疫ができる際に表れる症状も含まれる」と谷口医師が答える。

「これを“応答型反応”と言い、免疫ができる反応が強いほど、痛みや腫れといった反応が出ます。防御効果が強ければ、それができる際の反応が強いのも自然なことです」

 副反応で気を付けておきたいのが、アナフィラキシーだ。

 体内に異物が入ったときに短時間で全身に表れる急性のアレルギー反応で、皮膚の症状や血圧低下、意識の低下、呼吸困難などが生じる。

 厚労省によると、国内では、10日までに接種した医療関係者ら約14万9千人のうち、計25人にアナフィラキシーの症状が出た。投薬を受けるなどして、全員症状は改善しているという。

 国内の臨床試験では、アナフィラキシーを起こした約95%が女性で、アナフィラキシーの既往がある人が約40%だった。米国の報告では、発生頻度は100万回接種あたり4・5となっているが、国内では、10日時点では約6千人に1人の計算になる。

 感染症治療に詳しい埼玉医科大学総合医療センター(川越市)総合診療内科教授の岡秀昭医師が言う。

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高齢者や妊婦の接種は?