遠藤さんのところにやってきた患者の一人は、「入院して病院食をとっているうちに首が治った」という。カロリーは摂取していても必要なたんぱく質が足りていない人は多い、という。高齢者は特にたんぱく質を意識的にとろう。どのような運動がいいのか。

「首下がり症の改善で大事なのはお尻、骨盤です。骨盤から姿勢を正さないと、首は安定しません」

 姿勢を正すだけでは不十分で、同じ姿勢を続けないことがポイントだという。おなかを引っ込めて骨盤を後ろに倒して座る(仙骨座位という)のを、上半身を立てて座骨を座面につけて座る(座骨座位)のに15分に1回座り直すだけでも背骨への過度な負担を減らし、効果的だという。

 また、マッサージをするときは、むくみをとるようなソフトなマッサージやストレッチがおすすめ。強すぎると筋肉を傷つけて、さらに硬くなって悪循環だという。

 遠藤さんが勧める簡単な運動を二つ紹介する。右上の図を見ながら、ぜひやってみてほしい。

 東京・田端にある首・腰の痛みや手足のしびれ治療専門の「東京脊椎クリニック」院長の梅林猛さんにも話を聞いた。

「高齢者の増加とともにこの疾患に悩む人も増えています。筋肉をつけ、骨を強くすることが最優先。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)対策をしっかり行って、骨折をしないようにすること。骨折をすると体のバランスも崩れます。転倒が引き金になることも考えられる疾患だからです」

 ベストセラー『ねこ背は治る! 知るだけで体が改善する「4つの意識」』の著者、小池義孝さん(一義流気功治療院院長)は、深呼吸をすることで骨盤のゆがみや肩や首のこりが改善した例もある、と著書の中で紹介している。心を整え、体に意識を向け、気負いすぎずに深い呼吸で体を動かしていく。これが首下がり症の予防のカギのようだ。そして、たんぱく質もお忘れなく。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年12月4日号