年齢変化によるものが大きいので、高齢者に多いが、50代の患者も少なくないようだ。

「初期は肩こりのような違和感に始まり、だんだん頭部が重く、前にかがんだような状態になります。頭を無理に押し上げようとすると、首や背中に痛みを感じます。こうなるとQOL(生活の質)が著しく低下し、歩行に問題が生じたり、ごはんをのみ込むことや、呼吸さえも苦しく感じるようになったりします」

 恐ろしいのが3割程度が「突然発症型」という。「朝起きたらなっている。だからみんな驚くんです。目覚めて『あ、頭が上がらない』と」

 症状が出たらすぐに対処をするのが望ましい。

「でも多くの人が『首下がり症』そのものを知らないので、病院になかなか来ないのです。半年も過ぎてしまうと首の付け根にある筋肉が断裂・変性をし、脂肪となってそれが線維化してしまう。そうなると元に戻すのが厳しくなります。また、原因が、加齢以外の場合もあり、パーキンソン病や脊髄(せきずい)小脳変性症などの脳の病気由来や、内分泌疾患、薬剤由来の場合もあるので、疑わしいときは専門医への相談が必要です」

 冒頭で紹介した80代の女性、実は記者の母親だ。1カ月ぶりの対面がこの姿だった。

 とりあえず整形外科に行ったが、頸椎の多少の異常を指摘された以外はこれといった処置はなく「患部を温めて、意欲を高めてください」で終わった。上を向けないこんな状態でどうやって意欲を高めればいいのか。

 周囲に聞いてみると、「首下がり症」に悩んでいる人が意外と多いことがわかった。対処法を特集記事で広く伝えたいと考えて、遠藤さんに取材を申し込んだのだ。

 遠藤さんは対処法として、こう話す。

「まずは栄養と運動です。サルコペニア(全身の筋肉量が減少すること)にならないように気をつけてください。運動ができない人は大股で歩くだけでもいい。手を大きく振って胸を広げて肩甲骨を動かしながら歩きましょう。首ではなく、肩を回しましょう」

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