遺言書のイメージ (GettyImages)
遺言書のイメージ (GettyImages)
新制度の手数料の例 (週刊朝日2020年7月17日号より)
新制度の手数料の例 (週刊朝日2020年7月17日号より)

 自筆証書遺言を全国の法務局で預かる新制度が7月10日から始まる。1日からは先行して予約受け付けが始まった。自筆証書遺言は昨年1月から財産目録をパソコンなどで作ることが認められており、新制度とあわせて使い勝手がよくなると期待されている。

【遺言書保管の手数料はいくら?新制度の手数料の例はこちら】

 遺言には3種類がある。被相続人(故人)が自分で書く「自筆証書遺言」、2人以上の証人の立ち会いのもとで公証人に確認してもらう「秘密証書遺言」、口述内容をもとに公証人が作成する「公正証書遺言」だ。相続の専門家は公正証書遺言をすすめるが、費用がかさむのが難点だ。

 自筆証書遺言は、手書きで日付や署名、押印といった最低限の書式を満たせば有効だ。用紙や筆記具などに厳密な決まりはなく、鉛筆と紙があれば誰でも作れ、費用も抑えられる。ただし、今までは課題もあった。相続支援サービスを手がける「夢相続」の曽根恵子代表は、こう指摘する。

「自宅で保管されることが多く、故人が遺族に知らせないまま亡くなってしまった場合、紛失したり見つからなかったりすることがあります。意に沿わない内容である場合などには、相続人が廃棄したり、改ざんしたりする恐れもありました」

 新制度で法務局に預けられるようになれば、不安は減るという。制度の開始に合わせ、遺言の書式や注意点も改めて示された。法務局では遺言の内容そのものの相談は受け付けてはいないが、形式については確認できる。様式の誤りで遺言が無効となるケースも一定程度減る可能性がある。

「亡くなった後に家庭裁判所で遺言の内容を確認する『検認』が不要になる点も大きい」(前出の曽根さん)。検認の手続きは相続人全員の戸籍謄本などをそろえる必要があり、審査に1カ月以上かかることもある。

 実際に法務局に預ける場合には事前予約が必要だ。遺言書のほか、申請書や住民票などの必要書類を提出する。1件につき3900円の手数料がかかる。預けたときにもらえる「保管証」は大事に保管しておこう。被相続人が閲覧したり、遺言書の内容を変更・撤回したりしたい場合に必要になる。新制度の開始前に作ってあった遺言も預けることができる。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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