相続人が相続を開始した後には、遺言書を閲覧したり、証明書を交付してもらったりもできる。相続人の一人が閲覧したら、ほかの相続人にも通知される。

 ただし、「遺言の内容は預ける前に専門家に相談したほうがよい」と指摘するのは、相続と遺言が専門の行政書士の佐山和弘氏だ。

「本人の死亡時には、事前に登録した相続人に亡くなったことが通知されるなど画期的な点は多い。だが、財産の記入漏れや相続人への分け方など遺言の内容そのものはチェックしてもらえません。例えば、最低限もらえる遺留分を無視した分け方を指定すれば、相続人も戸惑います。新制度で遺言を書く人が増え、かえってもめるケースが増加しないか心配な点もあります」

 ちなみに、従来通り自宅で保管してある遺言も、形式を満たしていれば有効だ。

 相続でもめる原因の多くは、故人の意思が遺族に伝わっていないことだという。便利な新制度の利用を考えてみてはいかがだろうか。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年7月17日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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