常温(冷蔵)タイプは主に昼と夜に1食ずつ配達するもので、月の献立表を用意するところもある。気に入ったメニューを1食単位で注文できる場合もあれば、例えば平日5日間分(夕食)をまとめて注文する場合もある。

 冷凍タイプは全国に配送が可能で、長期間保存できることもあって需要が伸びているという。全国に約750店を展開するシルバーライフ(東京都)の清水貴久代表取締役は、こう話している。

「外出自粛が呼びかけられた3月と4月は、2月に対して150%以上も冷凍タイプの需要が増えました」

 配食サービスは、自炊に比べて割高になるのは否めない。ただ、業者・団体によっては(管理)栄養士が献立を作成しているので、バランスの取れた食事ができる。食材を買いすぎて無駄にすることもない。家族の中で1人だけ塩分を控えた制限食が必要な場合、配食サービスを利用すれば調理に割く時間を減らすことができる。

 また、民間業者でも安否確認のサービスをするところが多い。ソーシャルクリエーション(大阪市)が展開する「ニコニコキッチン」では、トイレットペーパーなど品目は決まっているが、生活用品の買い物代行サービスも提供している。

 高齢者以外への配食サービスもある。「ワタミの宅食」を提供する居酒屋大手のワタミ(東京都)の担当者は言う。

「利用者は高齢者が中心ですが、臨時休校が決まってからは、子どもを持つご家庭を支援するために親子向けの割安プランを提供しています。3月は前月より約2万5千食増えました」

 日本在宅栄養管理学会理事長で武庫川女子大学食物栄養科学部教授の前田佳予子氏は、配食サービスを利用する際の注意点を挙げる。

「過去に配食サービスの利用者にインタビューをしたことがあります。健康維持には役立っているという一方で、『冷凍の野菜だから食感が良くない』『味が濃い』『入れ歯だとかみ合わせが悪い食品もあった』などの声もありました。栄養素を満たしていれば、それだけ食べていればいいというわけではありません。例えば、果物や乳製品は付いてこない場合が多いので、自分で足してください。食事は楽しみの一つですから、お弁当を受け取って食べるという単調な作業ではなく、食器に移し替えるなどして体と頭も使ってほしいです」

 また、これからの季節は熱中症にも注意したい。

「水分も1日1.5リットルを目安にこまめに飲んでください。高齢者になると、のどの渇きも鈍化してきます。熱中症になったときのために経口補水液を冷蔵庫で冷やしておくのもいいでしょう」

(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2020年5月29日号