こうした事情は和歌山県も同様だった。同県も23日になってようやく、25日からパチンコ店への休業要請を決めたが、取材をした22日時点では多くのパチンコ店が営業を継続。大阪南部からなら車で15分もあれば、営業自粛要請の出ていない和歌山県のパチンコ店に到着できる。話を聞いた男性客は、大阪からだという。

「高速で来れば大阪から和歌山まで、車で10分ほどやん。大阪はパチンコ店以外でも、スポーツジムや飲み屋もコロナで休業。自分は飲食店で働いているが、店は営業できない。パチンコで遊ぶくらいしかない。コロナの感染?パチンコは確かに、密閉されて3密やけど、自分はまだ30歳代やから、大丈夫やろう。もし感染したら? しゃあないわなぁ」

 一方、このパチンコ店に近い地元の人に聞くと、

「毎日、夕方に少し散歩します。そのたび、パチンコ店に大阪とか京都の車が止まっていて、こういう人たちが新型コロナウイルスを運んでこないか、怖いなと感じます」

 と話していた。

 前出の奈良県内のパチンコ店の店内を歩いてみると、お客が座っているパチンコ台は全体の3割ほど。店員が、消毒液スプレーを片手に、店内を巡回していた。新型コロナウイルスの感染拡大にかなり、気をつけている様子はうかがえた。

 大型連休を前に近畿2府4県すべてのパチンコ店に休業要請が出たかたちだが、強制力はない。大阪府が休業要請に応じない店の店名を公表する前日の23日、大阪府内で営業していた3店舗を回ったが、「店名公表? うちは休まんと思う。お上が公表したらいい宣伝。お客様がたくさん来るんじゃないか」と、店員は言っていた。

 この店は24日現在も営業を継続している。なぜ、足並みがそろわないのか。大阪府内で営業自粛要請後、数日間は店を開けていたパチンコ店のオーナーに聞くと、こんな事情を話した。

「パチンコ店は、固定経費がけっこうかかるんです。人件費とかリース代とかね。営業せんと、日銭が入ってきませんやん。世間一般的にパチンコ店はめちゃくちゃ儲かっているというイメージがあると思う。けど、10年とか前ならいざ知らず、今はそういう商売やない。1日でも営業できんと、大変なんですわ。それで無理しても営業する店があるんです。いくら国や大阪府が休業補償してくれるいうても、それじゃまかなえん。だから、強引に店を開けるんですわ」

(本誌・今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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