山口公明党代表(左)と安倍首相 (c)朝日新聞社
山口公明党代表(左)と安倍首相 (c)朝日新聞社
二階自民党幹事長 (c)朝日新聞社
二階自民党幹事長 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスへの経済対策をめぐり政権が混乱している。「減収世帯への30万円給付」だった経済対策を急遽、「1人一律10万円給付」に転換したのだ。

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 4月7日に政権が発表した「30万円案」には、対象世帯が少なすぎるという批判が殺到。14日、自民党の二階俊博幹事長が「一律10万円給付」に言及すると、15日には公明党の山口那津男代表が安倍晋三首相に官邸で直談判し、「10万円案」への転換を強く要望した。「連立離脱」までちらつかせる山口氏に安倍首相が折れ、16日には補正予算案組み替えの方針を党幹部に伝えた。事実上、突き上げに「白旗」をあげたのだ。

 党内には「危機的状況なのだから、臨機応変に対応したのは良かった。時には折れることも必要で、それで批判されたら仕方ない」(安藤裕衆院議員)と首相擁護の声はあるが、「官邸主導」が続いてきた流れからすると異例の展開。政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう解説する。

「手続き上、10万円給付は2次補正予算でやるのが普通だったでしょうが、二階氏や山口氏といったベテラン議員が“超法規的措置”でねじ込んだ。『国民からダメ出しされているのに、これでは政権は持たない』と迫ったのではないか」

 二階氏と公明党が事前に通じていたかについては、「二階さんの発言に乗じ公明党が一気にまくしたてた。前もって組んでいたのではないでしょう」(内閣官房関係者)との見方がある一方、「『公明党も声を上げてはどうか』と、二階氏側からサジェスチョンがあったようです」(公明党幹部)とみる向きもある。

 今回のキーマンとなった二階幹事長は菅義偉官房長官、麻生太郎財務相とともに安倍政権を中枢で支える「3本柱」と言われてきた。その二階氏が首相に「反旗」を翻したのか。自民党幹部は、その背景をこう語る。

「安倍さんは次期首相と目される岸田(文雄政調会長)氏と握るため、彼に30万円給付をやらせて花を持たせたかった。PRにピッタリですからね」

 だが、岸田首相になれば自身に幹事長続投の目はないと考えた二階氏が「NO」を突き付けたという。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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