「ベテランならまだしも彼はまだ若い。傷の治りは早いでしょう。世界王者としての勝負勘の蓄積もある。休養後にしっかりと体を作り体力さえ戻ってくれば、問題はないと見ています」

 気になるのは精神面への影響だ。折山さんは、昨年10月にフィギュアスケート女子の本田真凜らが遠征先で交通事故に遭ったことを例に挙げ、音に対する恐怖感を懸念する。

「軽傷ではありましたが、本田選手はその後も『大きな音にビクッとしてしまう』と漏らしていました。バドミントンの競技会場は音が響く室内ですし、声援や歓声は五輪ともなればいつにもまして大きいでしょう。そういったときに影響がないとも言い切れません。五輪本番までに精神面のケアがどれだけできるかが、より大事になってきます」

 桃田といえば、4年前のリオデジャネイロ五輪直前に違法賭博が発覚し、無期限出場停止処分を受けた。しかし、そこからはい上がって世界王者まで上り詰めた精神力の持ち主だ。

 桃田は退院にあたり、

<心身の回復に努め、1日も早く元気なプレーをお見せし、支えてくださっているみなさまに恩返しをしていきたいと考えています>

 とコメントした。完全復活の日が待たれる。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年1月31日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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