高齢期のうつ病の原因の一つは、中枢神経の加齢。体の加齢と一緒で、新しいことが覚えられなくなったり、反応が鈍くなったりする。また、アドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質が減ってくるため、悲観的になったり、周りに興味を持てなくなったりすることもあるという。

「これらは誰にも起こる生理的なものです。ただ、そこに家族や友人の死、社会的な役割の終了(再雇用や再就職の終了)、将来や病気、死への不安などが加わったとき、それをきっかけにうつ病を発症してしまうのです」(新井さん)

 高齢期のうつ病は、先に紹介したフレイルにも関係する。家に閉じこもるようになり、人と交流する機会が減る。それが精神的な活動の低下をもたらすためだ。

 生活の質にも大きく影響する認知症やうつ病。その発症を遅らせたり予防したりする方法はあるのだろうか。新井さんは次のようにアドバイスする。

「生活習慣病のコントロールと、1日6~7時間程度の睡眠を。脳トレもいいですが、同じことの繰り返しでは一部の脳しか使われません。やはり、いろいろなことに興味を持ち、人と交流することをお勧めします。大事なのは、やらねばならないではなく、楽しみながらやること。それによって前頭葉をはじめ脳の広い部位が活性化します」

■がん
 国立がん研究センター「がん情報サービス」から代表的ながんをピックアップしたところ、男性では70代が最も患者数が多く、女性は乳房と子宮体部以外のがんで、70代以降から増加している。

 がんの原因は細胞の遺伝子異常。日々、体の中ではがん細胞が作られているにもかかわらず、がんにならないのは、細胞自身が遺伝子異常を修復したり、免疫が働いて異常な細胞を除去したりしているからだ。

「ところが、細胞が老化すると遺伝子の異常が修復されなかったり、遺伝子異常の頻度が増したりする。高齢者ががんになりやすいのは、細胞が老化するからなのです。70代を過ぎたら『いつがんになってもおかしくない』と思ったほうがいいかもしれません」

 こう話すのは、日々がん診断に関わっている病理医の小倉加奈子さん(順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授)。

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