フレイルの人は健康な人と比べて、約2倍死亡リスクが高いという研究結果も出ている。

 気になるのは、その予防や対策。介護予防対策に取り組む東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)高齢者健康増進事業支援室研究部長の大渕修一さんは、「75歳でも85歳でもできることはある」と言う。

「研究から『運動+栄養』によって筋力が戻り、フレイルが改善できるとわかっています。老化に伴い筋肉は減ってきますが、それは筋肉を構成する筋繊維の数が減るだけのこと。一本一本の筋繊維を太くすることは、何歳でも可能です。実際、われわれの研究では、筋力が落ちている人ほど効果が高いという結果が得られています」(大渕さん)

 大渕さんらの研究では、7カ所の地域に住む高齢者276人(平均75.3歳)に3カ月間、運動をしてもらった。その結果、年齢にかかわらず3カ月前より運動機能が上がり、その効果は筋力が落ちている人ほど大きかったという。

 大渕さんが勧めているのは、スロートレ。スクワットや階段昇降などの運動をいつもよりゆっくりしたペースで行う方法だ。ポイントは使っている筋肉がプルプルしてきた様子や、筋肉の疲労を感じること。スロートレは2日おきに行い、運動した翌日は筋肉を休ませる。これによって筋肉の修復が促され、筋繊維を太くできる。

「できれば、スロートレの前や後に肉や魚、大豆製品などでタンパク質をとりましょう。サプリメントでもOKです。筋肉がつきやすくなります」(同)

■骨の病気
 骨の病気の代表といえば、骨粗しょう症だろう。骨がもろくなり骨折のリスクが高くなった状態だ。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)」によると、女性の年代別の骨粗しょう症の発生率は、70~79歳が最も高かった。

■認知症とうつ
 認知症は70代から急に増え始めるが、実は、この年齢で注意したいのはうつ病だ。認知症をはじめ高齢者の心の問題に詳しい順天堂大学名誉教授でアルツクリニック東京(東京都千代田区)の院長、新井平伊さんは言う。

「うつ病は本来、40~50代で発症しやすい病気ですが、後期高齢者のうつ病は別の意味で深刻です。落ち込みよりもイライラ、焦燥感といった症状が特徴的で、認知症と間違われやすく、認知症の初期症状として起こることもあります」

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